枯芦へ落日の金放ちたる 桂 信子 評者: 山崎 聰

 実景であって実景でない、とはこういう句を云うのであろう。 一面金色の世界、ほかには何もない。 枯芦の金、落日の金、こちら側の世界と向こう側の世界が相呼応して金一色の世界を形作る。 云い方としては、“枯芦へ…放ちたる”と枯芦が受身になっているが、そう云いながら、作者は、枯芦そのものの発光をも肯定する。
 作者は今、金色の世界に居る。 ということは作者自身も金色なのだ。 金のイメージがすべてを支配する、そんな世界に身を置いて、志向とも願望ともつかぬ作者の内面の金色は、ますます輝きを増すのである。
 
評者: 山崎 聰
平成17年7月28日