黄の青の赤の雨傘誰から死ぬ 林田紀音夫 評者: 安西 篤
第一句集『風蝕』所収。昭和32年の作。「もはや戦後ではない」といわれた頃の都市の華やぎが、雑踏のなかに溢れたカラフルな雨傘に象徴されている。『林田紀音夫全句集』を編集した福田基によれば、〈黄、青、赤〉は自然色でなく原色で、色彩としての人間を意味するという。もちろん句意としても、群集のダイナミックな生の流れを見ている。その流れに自分も一粒の泡として身をゆだねながら、さてどの泡粒から消えていくのだろうかと思う。生の氾濫の中での死の予感である。
「黄の青の赤の」と細かく刻みこんだ旋律が、「雨傘」に集約されて切れ、さらに「誰から死ぬ」の後に、「べしや」ともいうべき推量の助動詞が略されて強く切れる。このような韻律効果が林田俳句の口誦性を支えているのだ。
「黄の青の赤の」と細かく刻みこんだ旋律が、「雨傘」に集約されて切れ、さらに「誰から死ぬ」の後に、「べしや」ともいうべき推量の助動詞が略されて強く切れる。このような韻律効果が林田俳句の口誦性を支えているのだ。
評者: 安西 篤
平成19年6月11日
平成19年6月11日