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耕牛の大きな眼一日酔ふ

亡父眠る谿よ毛深き夏蕨

空に鳥だけが残り幻のセールスマン

竜飛雪晴馬が息吸うさびしさよ

雁渡る翼の弱き雁も連れ

立って寝る馬包みゆく天の川

泳いだあとの沼蒼白に汽缶士眠る

秋深し変わらぬ家に蝶の翅

東北の夜明けを落ちて黄金虫

疲れては学も負債や鳥帰る

自愛で傾ぐ電柱犇き北陸線

愛を容れざる日の青年等硬球打つ

瞠けど眼のくらき春景色

 

川崎三郎『東北抄』（かわさき・さぶろう／『とうほくしょう』）

［目次］
『北の笛』抄　　　　　5頁
『北の笛』以後　　　　43頁
東北抄　　　　　　　　57頁
二つの死　　　　　　　111頁
解説　滑走の精神　鈴木六林男　121頁
　年譜　　　　　　　　137頁
　あとがき　　　　　　145頁

昭和60年初版　B6判　156頁
協会在庫管理の新古本。背にヤケあるものあり。ほぼ良好な状態。