古仏より噴き出す千手 遠くでテロ 伊丹三樹彦 評者: 津根元潮 

 昭和三十五年の作。この感懐は現在でも通じる。作者は、これを批判的リアリズムによる生活俳句の実践と称して、不安な三十年代の日本社会を背景に、新しい時代の到来を訴えた。そしてこの時期こそ社会性俳句が、ともすれば社会主義イデオロギーに偏しがちの中で、日常生活におけるヒューマニズムを根底に社会への連帯を訴えた。千手観音の憤怒の彼方にテロリズムは、いつも顔をのぞかせている社会不安を言葉にして、それに向かっての一種の箴言であり、現代にも通じる具象性を持っている。
 
評者: 津根元潮
平成15年7月1日