紅梅や和紙の手ざわり母に似て 後藤綾子 評者: 宇多喜代子

 「母に似て」は、そこここに見られる常套的な表現です。ところが「和紙の手ざわり」という感触から入る母への思いには、他にないものがあります。それも「紅梅」を配したことでイメージを決定した感があります。うわついたところのないはなやかさ。ちょっとざらついた生地のままの表情を見せる母。洋紙のようにツルリとしていない肌合いの母。だれもが懐かしく思う偏在する日本の母親を彷彿とさせる句です。
 
評者: 宇多喜代子
平成14年2月28日