撫でて在る目のたま久し大旦 三橋敏雄  評者: 和田悟朗

 「大旦」は「おおあした」と読み、一月一日の朝のことである。目は人間にとって外部の情況を早く認めるために最も効果の大きい重要な感覚器官である。新年の朝、目をさますと、目を見開いて部屋の中や外をしっかりと見て、ああ、自分はこうして新しい年を迎えることがでいたのだ、という意識を確かめることができる。作者はこのような感慨を、瞼を閉じその上を指で撫でるとずっと以前から眼球が存在することを感じて来たものだ、という表現で述べる。つまり、視覚の健全を指の触覚で表現した。句集『眞神』(昭和四十八年刊)所収。作者は1920年生まれ、2001年没。
 
評者: 和田悟朗
平成16年12月24日