春ひとり槍投げて槍に歩み寄る 能村登四郎 評者: 山崎 聰
一読、槍投げのポーズをした古代ギリシャの彫像が思い浮かぶ。槍が手を離れる瞬間、すっくと爪先立ちになって、一瞬動きが止まる。そして投げられた槍は、遥か彼方で鋭い角度から地面に突き刺さる。彼はそれを見定めてから、ゆっくりと槍に近づいて行く。
作者は、そういう一連の動きを、寸分の情も加えず、単にダイナミックな動作として描いた。そこにあるのは、青年の孤独だが優美な姿である。
「春ひとり」という季語の持つ寡黙で清潔な感じが、この句を一層引き緊った一句にしている。
作者は、そういう一連の動きを、寸分の情も加えず、単にダイナミックな動作として描いた。そこにあるのは、青年の孤独だが優美な姿である。
「春ひとり」という季語の持つ寡黙で清潔な感じが、この句を一層引き緊った一句にしている。
評者: 山崎 聰
平成17年5月5日
平成17年5月5日