寒紅や都はるみ少し痩せたか 鈴木石夫 評者: 前田 弘

 たまたま見ていたTVの画面に都はるみが映った。一見、寒紅を刷いた表情はきりりとしているが、作者は彼女の姿に「痩せ」を見逃さなかった。思わず「都はるみ少し痩せたか」と呟き、そのまま俳句にしてしまった。作者は、この頃は体重も40キロを切り、春一番に自転車ごと吹き飛ばされることもあった。しかし、このような体調にあっても、自分のことより、人の身の上を気遣ってしまう。誰かにほめてもらいたくて創った句ではないが、作者の生き方と心を彷彿とさせる。文学ではないが、文学を越えて人の心を動かす。ぼくは、そんな鈴木石夫の人と作品が好きであった。
「裏山に名前がなくて裏の山 石夫」。
作者の名もない日常への愛情をひしひしと感じる。石夫俳句を一口でいうと「裏山」、明け暮れ眺めても見飽きることのない懐かしさに違いない。
 
評者: 前田 弘
平成20年2月27日

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