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栗原かつ代 第一句集 『母は水色』

この一巻、第一句集にしてすでに詩的自在性と無限の可能性を秘めており、かつ代さんの天性の詩境が光る珠玉のきらめきを感受。さらなる開花を、そして伸展を期待してやまない。山本敏倖(序文より)

冒険の始めはこの木巣立鳥
女みなイヴの末裔林檎食む
極上の噓が聴きたい薔薇の園
伊勢海老や百歳だって脱皮する
すすき原誰か合図をくれないか

高橋透水 第一句集 『水の音』

「水鳥の水一枚を分け合へり」
透水さんは今年喜寿を迎えられた。俳句は年季が物を言う文芸であると私は思っている。人生の年輪が俳句の味わいを深めるのである。この飄々とした俳人はこのあとまた一仕事するのではないか、と私は期待しているところである。伊藤伊那男(序文より)

紅梅に飽き白梅を観てをりぬ
春光を縦糸として杼(ひ)の走る
行く春を掃き戻したる竹箒
紫陽花に夢といふ色加へけり
まづ足があほになりゆく阿波踊

中内火星 第一句集『SURREALISME(シュルレアリスム)』

「いかなるものにも属さない詩がある」

 当初は全作品「書き下ろし」でと考えたが、さすがにそれは及ばなかった。数句は古い句もあるが、大半の句はここ2~3年の句だ。 勿論「書き下ろし」も多々ある。また、カバー絵はピカソ、マチスのデッサン画を参考に描いたもので、ヌードと蛸の遊びである。(「あとがき」より)

いかなるものにも属さない詩がある
海を見ていた帰り道はもうない
つよい女にきれいな男おんだん化
着ぶくれて妥協しっぱなしなんだ
あれ以来みんな岩手が好きなのさ

加藤知子 第4句集『情死一擲』

俳句が穏やかなもの、誰にでもわかるもの、存問の詩となってから、どのくらい経っただろう。それは俳句が生き残る手段でもあったように思う。それはそれで良い。俳句が穏やかに懐かしく、心を慰めるものである事に、何の間違いもない。しかし、…(竹岡一郎跋文)

ほと深きところに卍春は傷
鏡像は花咲く森の死のむこう
人体のかけらが明りほうほたる
首筋に情死一擲の白百合
月影のゆれつとがりつ藻の花へ

 

高橋比呂子『風果』

「風果」とは、造語である。
〈果〉には、事柄が、進んでしまった後に生じる成果(果実)、はてる、などの意がある。
これまで旅をして、感じた風土など、吹かれたその刻々の風との合成語として拙句集の名とした。

さんたまりあのあのあたり国境
実南天みちかけみるみるゆうらしあ
きゅぴずむの夏の舞あり戦あり
風九月信者のように百塔あり
璞を売りきさらぎといえり

 

宮本佳世乃 第二句集『三〇一号室』

三〇一号室の住人は、俳人である。存在の「さみしさ」の根っこをさぐるように俳句と向き合い、おだやかな抒情の世界を展開する。
2017年現代俳句新人賞を受賞した俳人宮本佳世乃は、「炎環」同人で、同人誌「オルガン」のメンバーとして活躍する。本句集は2013年から19年までの作品をまとめた第二句集。

■収録作品より
来る勿れ露草は空映したる
こどもつぎつぎ胡桃の谷へ入りゆく
冬眠の患者に盗まるる両眼
いちめん青麦ひとりひとり浮く
月をゐて満月をゐてさみしがる

 

岡田由季 第二句集『中くらゐの町』

水鳥に会ふときいつも同じ靴

三十代までに十数回の転居をしましたが、
気が付くと、今の住居での暮らしが十九年ほどにもなります。
都会でもなく、本当の田舎でもない、
当地での生活にいつしか馴染んだようです。
(あとがきより)

一〇〇〇トンの水槽の前西行忌
自宅から土筆の範囲にて暮らす
雉の駆け込みし玉ねぎ小屋の裏
県庁と噴水おなじ古さかな

筑紫磐井『戦後俳句史nouveau 1945-2023三協会統合論』

「第二芸術」とその論を捉え直し、戦後俳句の3つの典型、「社会性俳句」「前衛俳句」「心象伝統俳句」の基準とダイナミズムを詳らかに提示。
それらを踏まえて戦後俳壇の流れを辿り、詠法の検証などもおこなう。

著者紹介
筑紫 磐井
東京都生まれ。『豈』発行人。現代俳句協会副会長、俳人協会評議員、日本文藝家協会会員。「飯田龍太の彼方へ」で俳人協会評論新人賞、「定型詩学の原理」で正岡子規国際俳句賞特別賞、加藤郁乎賞、「伝統の探求」で俳人協会評論賞を受賞。

 

保里よし枝『ひとりの窓』

窓越しの全てのあなたへ

句集『ひとりの窓』。この句集自体、不特定多数の方々が外の世界から、保里さんの作家性、詩心のただならぬ煌めきを知るきっかけとなる大切な「窓」と言えるだろう。(序文より 宮崎斗士)

現在
「青山俳句工場05 (宮崎斗士代表)」「超結社朱夏句会(なつはづき代表)」に在籍

さえずりに宙の扉が動き出す
春紡ぐひとりの窓のメゾフォルテ
クリムトの「接吻」洗い髪匂う
手袋の穴を見つけた日から自由
寒明けの水膨らんでくる蛇口

佐藤 久 第一句集『呼鈴のあと』

 一行で書かれた小説のような句だと感じる。勿論、実際には存在しない小説だ。それでも私はその小説を読んだことがあるように思えるし、何より想像できるのは、それを読む自分自身の姿なのである。そんな想像ができるとは、なんとも不思議な魅力のある俳句である。― 尾澤慧璃(跋より)

 

呼鈴のあとの永遠夏木立
母にだけ内緒の話桃を剝く
補助輪を外して帰る麦の秋
鳥渡るひとりで卵かけご飯
橋を吊る鋼線の束冬来る

瀬間陽子『新潮文庫の栞紐』

2000年度現代俳句新人賞受賞作家、待望の第1句集!

新潮文庫の愛はげしくて三日かな
死んでゆく鯨は朝の匂いせり
誰もいないことだけ願う涅槃かな
蠛蠓という健気さにまみれけり
秋灯はばかりながら白目澄む

 

土井探花『地球酔』 2024/8/23 再入荷いたしました

第40回兜太現代俳句新人賞受賞収載

最高にポップだけどインディーズ、しかもロック!空前絶後の探花ワールドにあなたも酔ってみませんか。ーー堀田季何

どうでもよいひととけつこうよい花火 
春月の呼吸聞こえるほどやまひ 
薄つぺらい虹だ子供をさらふには
シリウスの銀緯に父を放てたら
轡虫あなたも地球酔ですね 

 

コールサック社『語りたい兜太 伝えたい兜太  ― 13人の証言』

我々の俳句は、これからも、なんどでもこの人から出発するだろう。
「十三人の詩客」がそれぞれに見た永遠の、可能性としての、兜太――。
李杜の国からやってきた朋が、これらの胸騒がせる言葉をひきだした。
(帯文:高山れおな)

聞き手・編者:董振華
証言者:井口時男/いとうせいこう/関悦史/橋本榮治/宇多喜代子/宮坂静生/横澤放川/筑紫磐井/中村和弘/高野ムツオ/神野紗希/酒井弘司/安西篤
アドバイザー監修者:黒田杏子


小田島渚『羽化の街』 
電子書籍版の販売のみ

第39回兜太現代俳句新人賞受賞収載!
小田島渚は、誰も知らない、もうひとつ別の世界を隠し持っていて、その世界といつも一人行き来しているのではないかと勘繰ってしまうことが折々あった―― 高野ムツオ

清新な抒情と表現に対する冒険心が、良いあんばいで併存しており、いまだ荒削りな部分はあるにせよ、大器の片鱗を感じさせる―― 小林恭二

表現の対象となったであろう事象が重い場合も、その残酷さの凝視とともに詩の歓びが失われていない―― 穂村 弘
 
みなかみに逝きし獣の骨芽吹く
子猫から子猫分裂したやうな
足生えて歩き出す岩はたた神
背中にも眼のある巨人青嵐

川名つぎお『焉』

東京の蟬の爆死と歩むなり
陽炎に知る祖先の不安ユングの忌
ポケットを街のどこかに落しけり
雲雀野や予科練に学ぶ犠牲打
核実験ドストエフスキー流刑地

 

後藤章『俳句空間の言語』
第38回現代俳句評論賞 受賞作品収載!

俳論で論じられているのは言語だが、それら言語の点を後藤は自身の言語によって輝かせているのだ。一人でも多くの読者に、その輝きを目のあたりにしていただきたい、切にそう願う。──堀田季何(後藤空間の言語より)
電子書籍オンラインストア「Reader Store」でもご購入いただけるようになりました。
https://ebookstore.sony.jp/item/LT000173455001638744/?utm_source=haiku_assoc

 

林 桂『百花控帖』
第77回現代俳句協会賞受賞作品!
花薄(はなすすき)巨石(きよせき)は神(かみ)となりにけり 
ポインセチア紙金銀(かみきんぎん)に触(ふ)れ合(あ)ひて 
山法師(やまぼふし)山脈(やまなみ)の藍(あゐ)(さ)しにけり 
藪萱草(やぶかんざう)山河(さんが)神代(かみよ)のままになく 

花という装置の不思議を改めて思う。地球は水の星と言われるが、また花の星であろう。喪失を癒やす花がなかったら、地球はどんなに淋しい星になっていただろう。──林 桂(あとがきより)

 

橋本直『符籙』

知的でワイルドでスマートだけれど、どこかに下世話な優しさの漂う「中年」句にしばし耽溺してもらいたい――阪西敦子

『符籙』の一句一句には、思わぬ枠取りの魅力があり、それらは、根底にあるクールなまなざしによって、そのつど切り取られている――鴇田智哉

貂の眼を得て雪野より起き上がる
生牡蠣をまの口で待つ人妻よ
コーヒーが冷めてワインが来て朧
幾らでもバナナの積めるオートバイ

 

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上記4点を協会としては評価し、ペイパルによる決済を決めました。

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