春はあけぼのみなさんの忘れもの 松澤 昭 評者: 村井和一

 『枕草子』を踏んでいます。作者は「春は曙・・・のような音感のすばらしさは、ぜひ忘れないでほしい」といいます。音感だけではありません。先行文芸に唱和するという方法も近代の俳句が忘れてきた方法の一つです。こんな読み方もありそうです。
 電車の中の忘れ物第一位、雨傘。前夜の雨も上がって、晴れわたったあけぼのの空に持主の無情を嘆いています。
 
評者: 村井和一
平成13年5月7日