小豆沢裕子(あずきざわ・ゆうこ)

・1957年岡山県生まれ。
・1959年より神戸市在住。
・1974年学生俳句集団「がきの会」に参加、同時に波多野爽波主宰の「青」に入会。
・1979年「がきの会」解散。
・1991年「青」終刊。
・2002年「里」入会。
現在「里」に所属。
句集『右目』(2010年刊行)。
現代俳句協会会員。

 
第11回現代俳句協会年度作品賞受賞作品
「思う存分」 小豆澤裕子
 
また人に生まれ変はるや枯野人
つごもりの男に呪文かけに行く
数え日の白紙折れば立ちにけり
七草や丸めて捨てるサロンパス
情愛に糊しろ五ミリ松納
ペンギンのおじぎ今日より春と呼ぶ
紙雛の留守居してゐる詰所かな
淡雪と業務日誌に書き添へる
似顔絵の鼻が違つてゐる朧
よく振つて花菜にかける愛国心
のどけしや首つままれて醤油瓶
臍辺りから脱皮する朧かな
専守防衛陽炎が足障り
動物に例ふればヒト春だから
春風や思ふ存分引き籠もる
愛してと言はんがばかりしやぼん玉
夏近し右に曲がれば遠回り
蝶離り現のものとなる少女
葉桜や水は蔭りへ行きたがり
黒南風を辻にほつぽらかして来る
有りつ丈注いで残る西日かな
甚平に酔ひ潰れるといふ手あり
橋涼みヤクルトのおばさんが通る
糠床に捜しあぐねる茄子かな
鵜篝の零れし水面闇に帰す
良く眠るための体操蚯蚓鳴く
無花果甘しぐうの音も出ぬ時も
夜学校板書の文字の右下がり
何処からでも行ける広間や鹿の声
鶴来るライブカメラに雨の痕
 
 
※句は現代俳句データベースに収録されています。
※受賞者略歴は掲載時点のものです。