大竹 照子(おおたけ・てるこ)

・1941年(昭和16年)三重県生まれ。
・1994年(平成6年)石田よし宏に師事。
・1997年(平成9年)「花曜」入会。鈴木六林男に師事。
・1999年(平成11年)「花曜」同人。
・2000年(平成12年)「花曜」新人賞。
・2001年(平成13年)同人誌「地祷圏」(石田よし宏代表)創刊参加。
・2005年(平成17年)「花曜」鈴木六林男逝去により終刊。
・2008年(平成20年)今井聖主宰「街」入会。
・現在、「地祷圏」「街」同人。現代俳句協会員。
・句集に『砂時計』。
 
 
第14回現代俳句協会年度作品賞受賞作品
「残像」 大竹照子

雑踏の中のさみしき素足かな
青梅雨の青に染まりし首の冷え
蛇の残像裏口を開けるたび
梅雨晴れの真ん中にある小学校
夏の白鳥半分人になつてをり
昼の蚊が鏡の中に棲みつきぬ
三線を蛇の抜け出す午前二時
夕焼色のバスが一台来て停まる
夕立なか野鯉のやうな下校生
鶏頭の中の一本兜太かな
宇宙船めく夕暮の盆の家
抱つこせぬ約束の児のゐのこづち
面影に歩幅のありて十三夜
正論やマフラー膝に折りたたみ
墨磨りて二階は離島冬の雲
大寒やポストの音に深さあり
水仙を活けてしばらく正座する
凍滝やすぎきし時間かがやきぬ
麦の芽をわが精神の色とせり
先生に横向きのまま卒業す
花の夜のプラットホームの浮力感
快楽とは堰を落ちゆく花筏
朧夜の奥よりホームズの足音
保護色となりて声上ぐ雨蛙
転た寝の只今石鹸玉のなか
わが鬱の色のあぢさゐばさと切る
しづけさの集まつてゐる蟻地獄
ルノアール風紫陽花の表現力
萬の向日葵同じ方むく怖さ
月光のメスを入れたる蟬の羽化

 
※句は現代俳句データベースに収録されています。
※受賞者略歴は掲載時点のものです。