JR五能線
👤秋田*船越みよ
一両にひとり暮秋の五能線
船越みよ

JR五能線木造駅 撮影:船越みよ
「乗ってみたいローカル線」として観光客の人気を集めるJR東日本の五能線。
秋田県東能代駅から青森県川部駅まで43の駅を結ぶ全長147.2キロの非電化単線である。
多くの区間が日本海沿いを通り、白神山地や岩木山を眺めながら波打ち際の絶景を楽しめる。
千畳敷海岸やニッコウキスゲの咲く行合崎海岸、十二湖、海水浴場等の観光スポットもあり、風光明媚な日本海に沈む夕日は格別。
津軽平野の青田、稲田を一 両電車がゆるゆる走るのも風情があり郷愁をそそられる。
1997年3月の秋田新幹線開業に伴い、新たな観光列車「リゾートしらかみ」を運行。
近年は利用者数の減少が深刻であることに変わりはなく、激しい収支状況にあるようだ。
蛇抜けあと
👤長野*海野良三
懸巣鳴く木曽の谷間蛇抜け跡
海野良三

桃介橋 写真提供: 一般社団法人南木曽町観光協会
「木曽路はすべて山の中である」は島崎藤村の『夜明け前』の書き出しだが、その山の中を北から南に流れ下る木曽川には、幾本もの支流が流れ込んでいる。
大雨が降るとその急流が鉄砲水となり、土砂を押し出し災害を引き起こす。
それを地域では「蛇抜(じゃぬ)け」と呼んでいる。
昭和28年発生の蛇抜けの犠牲者を悼んだ「悲しめる乙女の像」が南木曽町の桃介橋を渡った伊勢小屋沢の近くに建立されている。
私は天白という初任地にある職員住宅から、その沢を渡って蘇南高校に通った。
しばしば鶯、懸巣、赤翡翠、蛇、猿などの動物が姿をみせてくれた。
自然がすぐ身近にあったのである。
薬子の乱
👤京都*吉田星子
薬子の乱燻る宮趾の草紅葉
山中志津子
日本には世界に誇れるものが数多くあるが、一統の王(皇)族もその一つ。
しかし骨肉の争いも時として歴史に刻まれている。
千二百年の都の素地を成された桓武帝、律令国家を不動のものに築かれた嵯峨帝。
ところがお二人の狭間に数年間即位された平城帝の事は殆どの日本人には馴染みがない。
本句に登場する薬子は太政大臣まで昇り詰めた藤原種継の娘。
父種継は平安京に遷る前、長岡京の造営に寄与した人物でもあったが、政界の諍いの渦中に暗殺された。
桓武帝の長子の平城帝と実力派の嵯峨帝とのシーソーゲームのような主権争いに於いて、詔勅に関わるポストにあった薬子は、兄藤原仲成が処刑されるに至り、毒を飲んで自殺した。
現在では「弘仁の変」と言う。