第1回「風を詠む」年間賞
大賞受賞者のことば

●永井潮さん

【年間賞大賞】
虎落笛地を生き抜きし瞽女の唄 永井潮

三年ほど前に脊髄を患い、頚椎の手術を受けたが後遺障害が残って歩行器がなければ移動出来ない身体になってしまった。以降、障害を持った方々を見る目が以前とは随分違っている。
福祉など無かった時代、視力を失った人の生きる選択肢はそう多くはなかった筈、瞽女と言う職業を選び数十年を生きて来たたくましさを思う。特に彼女たちの冬の暮らしの厳しさは想像に難くない。季語からの幻想を作品にした。

 


 

●山中葛子さん

【年間賞大賞】
からだふと木枯し一号ふとたてがみ 山中葛子

この度は「第一回風を詠む」の年度俳句大賞三作品のひとつに拙句が選ばれたとのご連絡をいただき驚きつつ感謝いたします。

「吹き付ける風が木枯らし一号と知った時に、おのれの身体の鬣がなびくのを感じた。冬の寒さに震えているのではなく、奮い立っている自分を見つけているのだ」(五十嵐秀彦選による鑑賞)。まさに鑑賞の素晴らしさをいただく幸運です。審査委員のお目にとまり、俳句交流の場にあやかるただ今です。


 

●与語孝子さん

【年間賞大賞】
寒卵立つための思想がない 与語孝子

思いもよらぬ賞を頂き大変嬉しく思います。よき師に恵まれ「わからなさ」の魅力、新鮮なことばの表現、十七文字で見たことのない世界を見せてくれる、そんな俳句の奥深さに触れることができ、俳句は私をワクワクさせてくれました。ただ創作にあたってはなかなか思うようにいかず、いつも躓いています。

この度の受賞が、これからの句作のステップアップとなるよう励んでいきたいと思います。