田植機 新潟 米山節子
田植機の置いてゆきたる水青し 米山節子
家族で田植え 撮影:山口冬人(写真家)
父母の後に付き遅れをとりながら、一株一株手植えをした子供の頃を懐かしみつつ、去り行く田植機の勇姿を見送ります。眼前には良米を産する越後の農村の風景が見渡せますが、稲作もより速くそして便利にと機械化が進みました。何条も一気に苗を植えられる田植機の登場。その軽やかな躍動により「結い」を組むことの必要もなく、おこわやおはぎの小昼が供されることもなくなりました。各戸が一台ずつの田植機に乗り、せっせと務める作業となったのです。 越後はまた水旨き地でもあります。早苗を植えるところまでは機械や人の手に頼り、田植機の去った後は水や太陽などの自然に育まれるのです。青々とした水面が広がります。
桜と田植え 撮影:山口冬人(写真家)
梅花藻 福井 斉藤ちず代
梅花藻や流れに白き水の詩 斉藤ちず代
梅花藻の白い花 写真提供:越前市観光協会
福井県越前市真柄町に梅花藻の生息地がある。治左川(じさがわ)と言い、川幅は約2メートル、梅花藻が咲くのは川のひとところ、100メートル位。1番の見頃は、梅雨明けの7月上旬から8月の上旬とされている。澄んだ水の流れに可憐な白い花が搖れる様子は、とても涼しげで夏の風情をいっそう楽しませてくれる。梅花藻は梅の花に似た5弁の白い花で、キンポウゲ科の淡水植物。水温は14度前後の清流にしか生育しない貴重な存在である。
又、治左川には、トミヨ(トビウオ科の淡水魚)がいる。トミヨは体長5~6センチで水温の低い清水にしか棲めず、治左川が日本の生息する南限と言われている。 地球温暖化が進む中、いつまでも残して欲しい花であり魚である。
治佐川に咲く梅花藻 作者の友人撮影
生石神社 兵庫 湾夕彦
みどりなす生石神社をくぐる風 湾 夕彦
生石神社 撮影:湾 夕彦
生石神社(おうしこじんじゃ) は兵庫県高砂市にある。神社の裏手に「石の宝殿」と呼ばれる大きな奇岩がある。誰が作ったのかわからない。大穴牟遅命と少彦名命が祀られている。水面に浮いているようにも見えるので、浮島とも言う。古墳時代からの採石場だったようだ。とにかくでかい。ほぼ方形。神社の本殿へぎりぎりに奇岩が迫っていて壮観。一陣の風がその間隙を通り抜ける。夏の暑さを忘れさせてくれるように爽やかである。岩の辺りの緑の風を詠んだ。
宮城県塩竈神社の塩竈、宮崎県霧島東神社の逆鉾とともに「日本三奇」のひとつとされる由縁である。