雪のこと

近 恵

 全国の大雪に見舞われた皆様にはご苦労をお察しし、お見舞いを申し上げます。
 記録的な大雪警報がこの冬各地に何度か出された。青森市内の、雪掻きで人の背よりも盛り上がった重たそうな雪。その映像に信号が心細い感じで映っているのでそこが道路なのだと解る。あらー、これは大変そう。友人らが実家の方は大丈夫かと心配してくれたのがよく解る。私の生まれ育ったのは青森県八戸市で、太平洋側にある。雪雲は大概八甲田山にぶつかってどかどかと雪を降らせ、その後太平洋側に流れてくるのであまり雪は積もらない。まあたまには一晩に三十センチも積もる事もあったりするが、私が住んでいた半世紀も前はそんなのはひと冬に一度か二度あるかないかで、冬は雪よりももっぱら冷たい風と凍結した道路との格闘であった。ただ、ここ数年は海水温上昇の影響で雪が積もる事が前よりも増えたようで、春の雪のような水分を含んだ重たい雪が真冬に積もる事もあり、重たくて雪掻きが大変だと母がぼやいている。積もってしまうと大変なので一晩に何度も竹箒で掃いて雪を片付けるため冬は痩せてしまうらしい。そういえば昔転勤で青森市に引っ越した友人も、冬は雪掻きで痩せるのよと話していた。とにかく積もったら片づけないと家から出られないし車も出せない。しかし雪でも公共交通機関はさほど麻痺しないので、会社や学校を休みますという訳にはいかないのだ。
 小学生の頃はあまり酷い雪が積もる事はなかったが、それでも多少でも降れば路面は凍結する。坂の途中で登り切れずに止まってしまった車に遭遇することは何度もあった。そんな時は私も止まっている車を後ろから押すのを手伝う。とにかく動き出してしまえば何とか走れる訳で押したり押されたりお互い様なのである。タイヤにチェーンを付けるのも小学生の頃から手伝っていて、教習所に通う頃にはすでにベテランの域。しかもジャッキアップ無しで行う。大人になってからスキー場へ行く途中にジャッキアップでチェーン装着をするの目の当たりにして驚いたものである。まあ大した売りにもならないが、おかげで東京に雪が降った時にも歩くのは怖くない。滑らない歩き方は体が覚えているのだ。それでも電車が動かなければ休みますと言えてしまうのが東京のいいところ、などと思いつつ、たまには東京にも雪が積もらないかなあと密かに思っているのである。

 雲に手のわずかに届く初雪だ