新春に寄せて 新しい俳句到来の予感
会長 高野ムツオ
新年おめでとうございます。昨年は起伏多い年であった。年末には核廃絶を長年世界に訴え続けた被団協がノーベル平和賞に輝いたという明るいニュースも入った。しかし、元日の能登半島地震は実に心痛む大災害だった。非情にも重なった9月の豪雨には言葉を失った。当地の被災された会員の皆さんに心よりお見舞い申し上げる。能登の1日も早い復興を祈るばかりだ。
本協会は昨年4月、一般社団法人化後の新体制での活動がスタートした。この1年、顕彰や出版、研修、年鑑発行など諸活動の充実化に加え、機関誌「現代俳句」にウエブ版を新展開するなど、協会活動の発展充実に役員や会員が協力しながら全力で取り組んできた。 国際部や社会事業部、現代俳句オープンカレッジなどにも進展が見られた。拡大された評議員会もオンラインを活用し開催することができた。相互理解を深める良い機会となったが、今後への課題も多く話し合われた。その一つに協会と地区協会との連携がある。法人化により組織的には地区協会は別々になったが、協会組織と地区組織はもとより一体であることを会員の皆さんにも改めて確認して頂きたい。相互が連携協力し合ってこそ、協会本来のダイナミズムが生まれる。
その象徴とも言える活動が11月16日の現代俳句全国大会で展開された。全国から参加者が訪れ、予想をはるかに超えた集いとなった。関西地区の若手が主体的に取り組んだ、開催二回目の募集句「青年の部」の躍動が目を見張った。十代、二十代の若者が新鮮な 俳句とスピーチで大会を盛り上げてくれた。坪内稔典氏の講演や入賞作品のパネルディスカッションとともに、新しい俳句の到来を予感させた。神野紗希など各選者による「青年の部」正賞句を以下に紹介しておく。
雪よ振る手がさよならをながびかせ 田村転々
レジ打ちの最後はパンをのせて春 堀内晴斗
塗りたての白線に落つ蝉の羽根 西山文乃
虎が死ぬ炎熱の藻に絡まつて 林山任昂
ひとつぶのヴィールスとして游ぎをり 本村早紀
をとことかをんなとか雪重いとか 島崎寛永
月涼し肺の広くて解剖図 佐藤知春
少子高齢化や情報化社会の価値観の多様化を背景に、 本協会の会員数は2002年の9299名をピークに 減少の一途をたどっている。2023年には4156名と半数以下になった。これに近年の物価高が加わり、 各部の支出削減の骨身を削る努力にも関わらず、活動費が逼迫する状態が長年続いている。会員数が多かった時期の蓄えも底が見え始めた。それらを踏まえ、昨年度の総会で会費値上げに理解と承知をいただいたが、いよいよ新年度から値上げ実施となった。年頭の挨拶としては忸怩たるものがあるが、会員諸氏の深いご理解とご協力をここに切にお願い申し上げる。