箱根駅伝  神奈川 有手 勉

箱根駅伝下剋上めく山場なり    有手 勉


権太坂 撮影:有手 勉

 箱根駅伝は毎年1月2日と3日、東京丸の内の読売新聞社前から箱根の芦ノ湖間を往復する関東地方の大学駅伝である。
 全国に向けてテレビやラジオの実況放送があり、今年で101回の長い歴史があることから全国に熱心なファンを持つ。正月のお茶の間を賑わし、沿道に鈴生りの大観客が詰めかけ、正に正月の一大風物詩となっている。
 10区間217.1キロのコースは都心の繁華街・湘南海岸・箱根山中と変化に富み、選手の気迫溢れるデッドヒートに歓声は途切れることはない。とりわけ、留学生を含む各校のエースが激突する花の2区、横浜の権太坂(写真)は名勝負地として名高い。

銅鏡     奈良   内田 茂

銅鏡は盾の形よ冬北斗       内田 茂


富雄丸山古墳 撮影:内田 茂

 銅鏡は、中国、日本、朝鮮などで広く使用された青銅製の鏡で、日本では、弥生時代から古墳時代の遺跡で多く発掘されている。大和を中心に各地の前方後円墳から出土する三角縁神獣鏡、北部九州の弥生遺跡から出土する方格規矩鏡などが有名で、用途は、現在の鏡のように物を映し出す道具としてだけではなく、祭祀・呪術用の道具として用いられていたようだ。形態は、円形がほとんどで、鏡面の裏側にはさまざまな画像や文様が鋳造されている。
 令和5年1月、国内最大の円墳、奈良市の「富雄丸山古墳」で常識を覆す異形の鏡が出土したと発表された。発見されたのは円形でも方形でもない盾形の銅鏡で、大きさも古代の銅鏡では最大だった。裏面には、古墳時代の国産鏡に似た神像や霊獣をあしらった円形文様が配されており、文様が龍を浮き彫りにした鼉(だ)龍(りゅう)に似ていることや表面が研磨されていることから銅鏡と判断され、「鼉龍文盾形銅鏡」と命名された。盾形銅鏡は、被葬者を守るため、魔よけと武具の盾の両方の機能を持たせたとも言われているが、冬の夜空に冴える冬北斗のように古代の謎を繙く指標となることを望みたい。

きじ馬    熊本   中山宙虫

きじ馬の尻尾はみ出す賀状来る   榮田しのぶ


きじ馬 撮影:中山宙虫

 熊本県の南部を流れる球磨川の上流にあたる人吉(ひとよし)球磨(くま)地域。民芸品のひとつに「きじ馬」がある。桐の木などの胴体に杉の木の車がついている。大きなものは子供たちがまたがったり、頭に紐をつけて曳いたりして遊ぶ玩具である。九州の他地域にも同様の玩具(場所によっては「きじ車」と呼ぶ)が存在するが、人吉の「きじ馬」は、その鮮やかな色彩により全国的に名を知られている。平家の落人が工芸品として広めていったとする説もあり、ロマンが広がる。なお、2020年、この地域を襲った球磨川の氾濫は、大きな被害をもたらした。未だ開通できていない国道や鉄道など、復興には時間を要している。