雪虫 北北海道 橋本喜夫
雪虫や冬があまがみするやうに 橋本喜夫
トドノネオオワタムシ(椴之根大綿虫)
晩秋から初冬にかけて空中を漂う姿が見られ、雪が舞っているように見えることから、雪虫の愛称で知られる。
ここ旭川では雪虫は冬の訪れを示す風情のあるものではない。俳人という立場になってからは、「ああ、あと2週間以内に初雪だなあ」とは思う。さらに昨年の冬のように雪虫の大量発生だと衣服や髪についたりして恐怖だ。本来は「綿虫」と呼ぶことも俳人になって初めて知った。零下41度という日本記録をもつ当地では冬の訪れを示すこの害虫はまさに「冬のあまがみ」だろう。冬に本気で噛まれたら即死か凍死だ。大学生のとき零下36度を何度も経験したので零下41度は想像がつくが、当地の驚くべき記録は最低気温ではなく一日の最高気温だ。
1909年(明治42年)1月21日この日の旭川の日中最高気温は零下22.5度である。これは私もさすがに想像がつかない。
泥つきの葱 埼玉 網野月を
泥つきの葱読売新聞紙 網野月を
泥付きの深谷葱 写真提供:深活
「出句したら、自分の句を言い訳するなよ」とは我師・山本紫黄先生の何時もの言です。「野暮だろう」と仰っていました。でありますので、本来は、自句自解は了とするところではないのです。
一読して意味の通る句であろうと想像しますが、どうして「泥つき」なのか、「読売新聞紙」以外ではだめなのか、という疑問が湧いてくると存じます。「泥つきの葱」は二十本くらいの束を買って、すぐに使用する二、三本を残して庭の土中に埋め返すのです。そうすると保存が効くのです。先人の知恵であり、筆者の場合は叔母から教えて貰った知恵でした。「読売新聞」はどうしても毎日新聞紙や朝日新聞紙では駄目なのです。まして産経新聞紙や日経新聞紙では意味を成しません。こう申しあげれば、読売新聞の大衆性や、ある種の社会性を背景としていることは容易に考えて頂けると存じます。加えて、一個のプロ野球団との密接な関係性も加味して頂ければ幸甚です。敢えて申し上げると筆者は決してアンチ巨人ではありません。
これ以上、自句自解すると野暮の骨頂になりそうですから、筆をおきます。
除夜詣 長野 窪田英治
砂時計の砂は星々除夜詣 窪田英治
写真提供:長野県別所温泉 北向観音
大晦日の夜に一年間の感謝と新しい年を無事に過ごせるようにと翌年の歳徳の方角の神社仏閣に参詣する。有名な神社仏閣に参詣したり、村の鎮守にお参りする。
参道には縁起物を売る店や年越し蕎麦を振る舞う所もある。境内には大火が焚かれ火の粉が夜空に舞上がる。ふと空を見上げるとびっしりと星々が瞬いている。地上の賑やかさと対照的に静かな天空。地上に流れる時と天空に流れる時の速さをふと思った。宇宙という大きな砂時計があり、その砂は星々なんだと。
除夜詣という節目、そんな時に出会った星空である。