荒脛巾 宮城 渡辺誠一郎
落葉には落葉を重ね荒脛巾 土見敬志郎
荒脛巾 撮影:渡辺誠一郎
荒脛巾(あらはばき)の神は、旅中の安全や下半身の病に霊験があるとされ、古くから人々の信仰を集めてきた。国府があった宮城県多賀城市郊外の民家の奥庭に、この社が古色蒼然たる佇まいで鎮座している。社殿には、男根をかたどった彫りものや、草鞋やスニーカーなどの履物が奉納されている。対蝦夷を目的に、かつては多賀城国府東門の外側にあったとされる。今や国府多賀城は消滅。しかし荒脛巾の神は残る。掲句は千年の時空を重ね、今なお動かぬ荒脛巾の神を詠む。
競りの蟹 福井 白﨑寿美子
競りの蟹値の付けられてから動く 白﨑寿美子
競りの蟹 提供:福井県観光連盟
福井で水揚げされるズワイ蟹は越前蟹と呼ばれています。水揚げされた漁港によってブランド名がつけられ、越前蟹はブランドマークの入った黄色い証明タグが付けられています。明治四二年から皇室にも毎年献上されている歴史ある蟹です。その中でも、特に立派なものは近年「極(きわみ)」と名付けられ大変な高値がついています。
蟹漁は夜のうちに行われ、早朝港に着き次第生きたまま競りにかけられます。豊漁の時は、特に市場全体が活気付きます。今年も初競りの様子がテレビで賑やかに放映されていました。大きな越前蟹がずらっと足を揃えて並んでいる様子は、それはそれは見事なものでした。
今年三月、東京―福井間に新幹線が開通し、東京から三時間足らずで越前蟹に会えることとなりました。ぜひ、皆様も福井へお越し下さい。
「原発圏」とは 新潟 水野宗子
原発圏内音の無き夜の時雨 水野宗子
小雨の中「柏崎刈羽原発」から7~8kmの海岸から撮影。作者宅はもう2~3km離れた所にある。
撮影:清水逍径
原子力発電所からおおむね五~三十㎞圏内に住む人たちは万が一、原子力発電所が緊急事態となった場合は屋内退避となっているが、冒頭のこの句の原発は東京電力柏崎刈羽原子力発電所のことを指している。
今年の元旦の能登地震の時は、すぐに原発は大丈夫かと不安が過り心配な一夜を過ごした。
私の住む所は原発から十㎞地点であり、海の彼方に原発の灯が見える位置にある。その灯は小さなひとつの街の不夜城のようにも見え不気味である。