写真提供:「静寂」加藤 祐一

 

「百景共吟」より2句鑑賞  浅川芳直

花火殻水に溺れてゐたりけり    橋本喜夫

 花火は川辺で打ち上げることが多い。花火大会の翌朝、花火の殻が水に漬かっているのだろう。なかなか花火大会の次の日の会場へ足を運ぶ人は少ないだけに、作者の地元、定住者の句だということまでもこの十七音から想像できる。
 花火殻は魔除や縁起物で縁下に吊るすこともあるが(福島県の浅川町ではこれを魔除花火として土産物にしている)、魔除花火が川の流れに溺れているという把握に、なんとなく物のあはれが漂っている。

足裏の恥じらうプール開きの日   なつはづき

 暑い日のプール開きだろう。プール開きをするようなプールは屋外プールだから、さぞ天気のいいはず。プールサイドもさぞかし熱いに違いない。ここから先は筆者の鑑賞で突き進む。きっと、素足の裏がひりつき、指をくっと曲げて、なるべく足裏の接地面を減らしてよちよちと歩いているのではないか。それを「足裏の恥じらう」と言ったところ、自己対象化のひとひねりが奏功しているように思う。声に出して楽しい句だ。