第61回現代俳句全国大会 優秀作品発表

第61回現代俳句全国大作品作品応募数は、12,453句に達しました。
大会行事は、予定通り11月16日(土)に奈良県奈良市のホテル日航奈良にて開催いたしました。
ご投句くださいました皆様に厚く御礼申し上げます。

現代俳句全国大会賞

幾万の鶏を枯野に埋めて忘れる  東京都 山戸則江

納屋開けるたびに倒れる捕虫網  奈良県 吉田成子

現代俳句協会会長賞

白桃の浮力戦争終わらない    埼玉県 山﨑加津子

関西現代俳句協会会長賞

蟬の樹から少年剝がれてくる夕べ 秋田県 小林万年青

毎日新聞社賞

恐竜の名前が長い夏休み     東京都 栗原かつ代

朝日新聞社賞

戦争に視聴率ありソーダ水    東京都 川崎果連

読売新聞社賞

一つずつ踏切鳴らし帰省せり   新潟県 松井 弓

俳句のまちあらかわ賞

春爛漫すべてのドアが開きます 和歌山県 満田三椒

特別選者特選句

【宮坂静生選】 銀漢に水汲みに行きもどり来ず    大分県 福田英子
【中村和弘選】 叔父の眼鏡展示されおりペルリュー島 茨城県 成井惠子
【寺井谷子選】 龍天に潜む戦車を遥かにし      埼玉県 山﨑十生
【高野ムツオ選】幾万の鶏を枯野に埋めて忘れる    東京都 山戸則江
【秋尾 敏選】 恐竜の名前が長い夏休み       東京都 栗原かつ代
【対馬康子選】 幾万の鶏を枯野に埋めて忘れる    東京都 山戸則江
【小林貴子選】 にんげんの八月にある揮発性     東京都 山本敏倖
【永井江美子選】七軒の村八人の盆踊り        東京都 樋口昇る
【久保純夫選】 つくられたわたしをセーターごと脱ぐ 東京都 中内火星
【筑紫磐井選】 妻の名を言へぬ夫との花見かな   神奈川県 工藤加代子
【星野高士選】 セーターに頭を入れるとき不安    岡山県 難波正夫
【佐怒賀正美選】ウィッグ脱ぎ子は寛解の髪洗う    岩手県 さいとう白沙
【福本弘明選】 茶の花を散らさぬように斬られ役   兵庫県 塩見恵介
【後藤 章選】 硝子屋が来て万緑を入れてゆく    埼玉県 波切虹洋
【安西 篤選】 八月や無言も言の葉のひとつ     東京都 古寺ななえ
【池田澄子選】 虫干や母の嫌ひしカーキ色      滋賀県 勝又千惠子
【伊藤政美選】 桜桃忌靴が揃えて置いてある     埼玉県 杉本青三郎
【桑原三郎選】 納屋開けるたびに倒れる捕虫網    奈良県 吉田成子
【小菅白藤選】 すつぽりと太平洋を脱ぐ初日     埼玉県 桑原三郎
【鈴木正治選】 踊り鉢巻伊昔紅とは与太の父     東京都 松田ひろむ
【舘岡誠二選】 ガザの子はかつての私かざぐるま   東京都 蓮尾碩才
【前川弘明選】 特選はAI俳句四月馬鹿       兵庫県 石原糸遊
【前田 弘選】 喩うれば雪の匂いの母の耳      千葉県 川守田美智子
【山崎 聰選】 体ごと笑ふみどりご春の月      新潟県 前田猫佳
【和田浩一選】 七軒の村八人の盆踊り        東京都 樋口昇る

秀逸賞

冷奴ひとりぼつちがふたりゐる    新潟県 糸早津翠邦
海という大きな墓標沖縄忌      千葉県 黒澤雅代
硝子屋が来て万緑を入れてゆく    埼玉県 波切虹洋
墓洗うこの乳吸った夫と子の     福岡県 羽犬塚 結
しゃぼん玉吹いて柔らかな拒絶   神奈川県 町野敦子
すつぽりと太平洋を脱ぐ初日     埼玉県 桑原三郎
下書きのまま暮れている冬の街    東京都 山戸則江
私が行けば家族が揃ふ彼岸寺     茨城県 小池つと夢
七軒の村八人の盆踊り        東京都 樋口昇る
セーターに頭を入れるとき不安    岡山県 難波正夫
地図になき仮設の町よ雲の峰     奈良県 片岡宏子
顔洗う水に目のある原爆忌      東京都 宮川夏
体ごと笑ふみどりご春の月      新潟県 前田猫佳
にんげんの八月にある揮発性     東京都 山本敏倖
光背を持たぬ円空仏ぬくし      埼玉県 尾堤輝義
村という大きな柩夏の雲       北海道 粥川青猿
八月や何故か似てゐる基地と墓地  神奈川県 山下遊児
妻の名を言へぬ夫との花見かな   神奈川県 工藤加代子
コスモスを分解すれば風ばかり    兵庫県 横田達夫
白骨が一番きれい冬銀河       北海道 小川 桂
ウィッグ脱ぎ子は寛解の髪洗う    岩手県 さいとう白沙
亡びゆくもののあかるさ白牡丹    北海道 石川美智子
おとうとは梅雨の豆電球だった    兵庫県 木村オサム
手足出て蝌蚪の誤算の始まれり    愛知県 犬飼孝昌
少年と夏草同じ息を吐く       愛知県 原しょう子
虫干や母の嫌ひしカーキ色      滋賀県 勝又千惠子
つくられたわたしをセーターごと脱ぐ 東京都 中内火星
下闇に祠を残し村消ゆる       徳島県 中川秀司
茶の花を散らさぬように斬られ役   兵庫県 塩見恵介
座布団の上の淋しさ春の家      大阪府 星野早苗

佳作入賞

兜虫はセルロイドの匂いがする   鹿児島県 秋山青松
青虫の逃げもかくれもしない青    千葉県 岡田春人
跳び箱の水平線を跨ぐ初夏      東京都 西本明未
かたつむり句碑の下五を読みにゆく 和歌山県 満田三椒
特選はAI俳句四月馬鹿       兵庫県 石原糸遊
狐の牡丹銃砲店が開いている     東京都 松田ひろむ
散骨はこの海と決め平泳ぎ      茨城県 菊地久子
箱庭に明るい国をつくる子ら     東京都 川崎果連
振り向かぬあなたにうしろから草矢  佐賀県 伊都 
自らをともしびとして冬の蝶     大阪府 有松洋子
時間より離れて暮らす大海鼠     福岡県 太山本則男
八月は平和に向う靴を買う      山口県 松本清水
ガザの子はかつての私かざぐるま   東京都 蓮尾碩才
覗かれて恥かしさうな冷蔵庫     福島県 平子玲子
新品の体が欲しい更衣        熊本県 宮本奈緒美
下校する途中で蝶々になっている  神奈川県 尾崎竹詩
傘立てに杖ある不安昭和の日     北海道 中島土方
白鳥に歩いてもらつては困る     埼玉県 田口 武
被災地の仮と言う名の隙間風     東京都 杦森松一
薔薇の字が書けて薔薇好き母白寿   青森県 関 礼子
ひとを撃つも抱くも同じ手敗戦忌   東京都 森山あき子
戦争の敵はユーモア牛蛙       大阪府 千坂希妙
陽炎や更地にひとつだけ蛇口     兵庫県 太田酔子
喩うれば雪の匂いの母の耳      千葉県 川守田美智子
八月や無言も言の葉のひとつ     東京都 古寺ななえ
古着屋は古着をたたむ広島忌     愛知県 有本仁政
全員の降りて朧となる木馬      東京都 こしのゆみこ
草おぼろもう影もたぬ兵たりし    高知県 山﨑光子
妹がやわらかくなる豆の飯      愛知県 名渡邊淳子
限界の村すつぽりと虹の中      東京都 樋口昇る
踊り鉢巻伊昔紅とは与太の父     東京都 松田ひろむ
陽炎に守られている石舞台      北海道 菅井美奈子
少年のポケットは森兜虫       東京都 曽根新五郎
パソコンに蝶の殖えゆく工学部   和歌山県 北岡ゆみ
パイプ椅子並べ終りぬ広島忌     埼玉県 尾堤輝義
包帯をほどけば青い麦畑       埼玉県 伊藤 進
次に会ふのは綿虫になつたとき    三重県 伊藤政美
さくらよ降るな戦没者が眠れない   埼玉県 鈴木砂紅
ぎしぎしや今日を忘るる母を抱く   滋賀県 福田 漣
鬱になる手前で崩すかき氷      埼玉県 波切虹洋
月朧看取りの椅子は浅く掛け     奈良県 片岡宏子
鼠花火家族の中心から逃げる     広島県 石川まゆみ
星凉し水飲むようにさっと泣く    北海道 瀬戸優理子
悉く生者のことば平和祭       福岡県 松本逸朗
虹の端に触れて戻りぬブーメラン   奈良県 あめ・みちを
南風吹く自転車だけの島暮らし    大阪府 小枝恵美子
地球儀の海は一色沖縄忌       奈良県 吉田成子
あめんぼとあめんぼ昏くすれちがふ  栃木県 石倉夏生
龍天に潜む戦車を遥かにし      埼玉県 山﨑十生
銀漢に水汲みに行きもどり来ず    大分県 福田英子

青年の部 正賞

【神野紗希選】 雪よ振る手がさよならをながびかせ 洛南高等学校 田村転々

【瀬戸優理子選】レジ打ちの最後はパンをのせて春    名城大学 堀内晴斗

【曾根 毅選】 塗りたての白線に落つ蝉の羽根 洗足学園高等学校 西山文乃

【田中亜美選】 虎が死ぬ炎熱の藻に絡まつて       兵庫県 林山任昂

【野口る理選】 ひとつぶのヴィールスとして游ぎをり  東京大学 本村早紀

【堀田季何選】 をとことかをんなとか雪重いとか  茨城県下妻市 島崎寛永

【岡田由季選】 月涼し肺の広くて解剖図    お茶の水女子大学 佐藤知春

青年の部 准賞

【神野紗希選】
はじまつてをはるゆふだち火葬待つ  辻村栗栖
蛍飛ぶ人魚の鰭を埋めた森      中田真綾
学食の米の硬さよ汗拭ふ       蛙多楓太
鳥葬を選べぬ国にゐて涼し      柊木快維
ひとつぶのヴィールスとして游ぎをり 本村早紀

【瀬戸優理子選】
少女落ちてこない世界の夏野かな   伊藤菖蒲
少年に凧を泳がす力あり       島田道峻
中継の何も伝へずメロン食む     須藤臣人
煮くづれて家は実家となりにけり   山中はるの
林檎割る蜜のかたちが鐘に似て    大西美優

【曾根毅選】
夏の夜に ファミレスに残った タルタルソース タルタル・マジック
1番レジからしか見えない夕焼がある  堀内晴斗
みずのおとかさなつてゐるめろんかな 白石孝成
プールありターンのあとのしづかさに 木村幸人
気になるの プールで香る あなたのシャンプー 小気味 良

【田中亜美選】
音がない世界に降りしきる愛日    渡辺あみ
撫子や深く彫らるる兜太の句     山本恭児
全てほどけば繋がるのに争う     飯澤遥土
それぞれの夢を持ち寄る焚き火かな  久米佑哉
余白には鳥と書かれて三島の忌    酒井拓夢

【野口る理選】
暗闇の手はハンカチをきつくきつく  田中一期
春鹿の目に亡国の潜みたる      山本恭児
鶏頭はすなはち太陽の形見      山田啓太
1番レジからしか見えない夕焼がある  堀内晴斗
煮くづれて家は実家となりにけり   山中はるの

【堀田季何選】
たぶららさ桜は風に脱字して     横山航路
万緑や玻璃に栄えて街に街      木村幸人
大人といふ軋み雪といふ残響     島崎寛永
二〇四五年八月十五日        林山任昂
正史には魔女と書かれて栗の花    本村早紀

【岡田由季選】
冬のバス無限に続く単語帳      のり介
秋晴れや二人きりなる二人乗り    清水瞳美
草いきれ戦争を戦争と呼ぶ      磐田 小
煮くづれて家は実家となりにけり   山中はるの
盆の月てのひらに鈴だまらせて    真帆

入選

【神野紗希選】
水晶を砕いて雪催のかけら       岡田侑楽
海底に珊瑚の死骸ハンモック      宇都宮駿介
卯の花腐しシャワーヘッドは床のまま  甘煮
苺描く一年一組一番          あをのしゑる
薄荷水めぐりて星の香のからだ     酒井拓夢
レジ打ちの最後はパンをのせて春    堀内晴斗
春の風邪バナナフィッシュのふみごこち 高遠みかみ
口が「い」のままや寒いと言ったきり   堀内晴斗
炎天の壁打ちわたし対せかい      真帆
ピクルスに春が来ているすっぱくて   福田匠翔

【瀬戸優理子選】
僅差でも敗者炎天下の握手       山本涼香
濁点を外すあそびやところてん     蛍丸
たぶららさ桜は風に脱字して      横山航路
迷ひ子に声かけ損ねアイスティー    平野直太郎
ゑのころのものを教へてゐる角度    齊藤巻繊
ロボットは立方体の夏休        櫻田咲良
大暑なり色紙の多き定食屋       田籠 瑛
声変はりしきつて冷素麺つるり     島崎寛永
就活のための声色さくらんぼ      大西美優
自習室に西日GABA入りチョコレート 山本涼香

【曾根 毅選】
すこしわらつて夏野のことをきみは云ふ 酒井拓夢
黒揚羽バージンヘアのあと三日     石村まい
この黴を話せる友の無かりけり     千田とまと
菊の日の丁寧に眼鏡を洗ふ       鬼頭孝幸
君も外見ている初夏の自習室      岸 快晴
太陽が切なく響き暮れの秋       村錆
生まれては消えるアイドル氷中花    伊藤菖蒲
ハビタブルゾーンたゆたう心太     北口直敬
鶏頭はすなはち太陽の形見       山田啓太
初東風やスーツに残るしつけ糸     中野そよ香

【田中亜美選】
ヴォーリズの校舎うつくし茜さす    中西知子
ふるさとの星はわたしを埋め尽くす   ももな
万緑や玻璃に栄えて街に街       木村幸人
兵期終へし留学生の外寝せり      森田雪虚
中継の何も伝へずメロン食む      須藤臣人
プールありターンのあとのしづかさに  木村幸人
薄荷水めぐりて星の香のからだ     酒井拓夢
レジ打ちの最後はパンをのせて春    堀内晴斗
郭公や始発電車の半透明        あをのしゑる
川挟む県が薊を咲かせあふ       岡本龍太郎

【野口る理選】
すこしわらつて夏野のことをきみは云ふ 酒井拓夢
師の挫折てふ我が挫折りんご剥く    新堀笙子
自画像の鼻腔の青き薄暑かな      砂狐
夏つばめ僕は口笛くらいしか      磐田 小
星冴ゆる陶器に千の壊れ方       コンフィ
野遊の空へ深入りしてしまふ      辻村栗栖
指切りをのばしてほどくサイネリア   田村転々
膝の血のすね毛にからむ暑さかな    藍澄
爪切りひとつ枕ふたつの昼寝なり    雨華
蝶の昼歩くたび鳴るタンバリン     服部亮汰

【堀田季何選】
白シャツを翳らせ空の色にする     齊藤巻繊
甘酒や壁に大きく避難地図       武田小桜
1番レジからしか見えない夕焼がある  堀内晴斗
鳥葬を選べぬ国にゐて涼し       柊木快維
已己巳己な僕ら星月夜のなかを     稲置 連
レジ打ちの最後はパンをのせて春    堀内晴斗
双六に母を加ふるための家事      横山航路
海に息吹き込むやうに星流る      石村まい
僕やれます月盗めますほんとです    市川桜子
翡翠よ山の向こうに世界はない     島崎結菜

【岡田由季選】
少女落ちてこない世界の夏野かな    伊藤菖蒲
濁点を外すあそびやところてん     蛍丸
炎天の壁打ちわたし対せかい      真帆
月涼し微震のコインランドリー     本村早紀
膝の血のすね毛にからむ暑さかな    藍澄
頭蓋骨いっぱいにきみの香水      真帆
冷凍のブロッコリーの万の蕾      とかげまろぅ
就活のための声色さくらんぼ      大西美優
ことづてはうすみどりなる蚕かな    長田志貫