第59回現代俳句全国大会と優秀作品発表

第59回現代俳句全国大作品作品応募数は、9,168句に達しました。
大会行事は、予定通り11月12日(土)に北九州市のJR九州ステーションホテル小倉にて開催されました。
ご投句くださいました皆様に厚く御礼申し上げます。


全国大会優秀作品受賞者(左 朝日新聞社賞 田村 葉氏、右 読売新聞社賞 伊藤惠美子氏)

                         令和4年度協会各賞の受賞者

  

 記念講演 平出隆先生(詩人・多摩美術大学名誉教授)

 

現代俳句大会賞

尻といふ平和が並ぶ汐干狩     神奈川県 衣川次郎

七夕やおとなになりませんように   兵庫県 石原糸遊

毎日新聞社賞

窓の雪寝たきり妻の尿ぬくし     大阪府 森 教安

朝日新聞社賞

卒業の以下同文を生きてゐる     山口県 田村 葉

読売新聞社賞

手を置けば石語り出す広島忌     山口県 伊藤惠美子

西日本新聞社賞

下校児がもうとんぼうになっている  徳島県 中川秀司

時事通信社賞

ふらここの庭に戦車がやって来る   奈良県 寺町容子

俳句のまちあらかわ賞

失言の多くは本音蟬しぐれ      北海道 中島土方

北九州市長賞

蚯蚓鳴く骨無き兵の墓じまひ     兵庫県 杉原青二

北九州市立文学館賞

逝く夏の廊下の奥をたしかめる    大阪府 波多洋子

上記の各賞の作品評は『現代俳句』12月号に掲載します。

特別選者特選句

【宇多喜代子選】 麻酔中螢だったか風だったか   愛知県 田中の小径
【宮坂静生選】  死者たちが乗る朧夜の観覧車   茨城県 大野ひろし
【中村和弘選】  一頭も軍馬帰らず大夏野     群馬県 相澤礼子
【寺井谷子選】  秋燈へむんずとつかみ牛産ます  埼玉県 増田信雄
【高野ムツオ選】 天に天の川ヒロシマに太田川   山口県 松原君代
【秋尾 敏選】  裸木や裏口がよく見えている   三重県 伊藤眞知子
【対馬康子選】  青時雨ことばは水でできている  静岡県 尾内以太
【小林貴子選】  胡瓜に棘だれも守ってはくれない 埼玉県 鈴木砂紅
【永井江美子選】 夏蝶に遅れて届く手紙かな    三重県 岩田典子
【久保純夫選】  蟬穴に火薬の匂い法学部     東京都 石口 榮
【筑紫磐井選】  アリバイは紋白蝶に会いしのみ  東京都 関戸信治
【後藤 章選】  窓の雪寝たきり妻の尿ぬくし   大阪府 森 教安
【安西 篤選】  毛糸編む余生の色を足しながら  熊本県 矢嶋道子
【池田澄子選】  青信号炎天に人放たれる     福岡県 金子美智恵
【伊藤政美選】  逝く夏の廊下の奥をたしかめる  大阪府 波多洋子
【柿本多映選】  戦争をしている国へ鳥帰る    秋田県 小林万年青
【桑原三郎選】  窓の雪寝たきり妻の尿ぬくし   大阪府 森 教安
【小菅白藤選】  戦争をしている国へ鳥帰る    秋田県 小林万年青
【鈴木正治選】  尻といふ平和が並ぶ汐干狩    神奈川県 衣川次郎
【鈴木八駛郎選】 秋燈へむんずとつかみ牛産ます  埼玉県 増田信雄
【館岡誠二選】  蓮の実の飛び出し空家また増える 秋田県 三浦静佳
【辻脇系一選】  引き裂かれコウゾ・ミツマタ・ウクライナ 広島県 川崎益太郎
【前川弘明選】  折鶴に鋭角いくつ昭和の日    宮崎県 長友 巖
【前田 弘選】  春風をはさみ絵本を閉ぢにけり  大阪府 有松洋子
【山﨑 聰選】  にんげんの見える明るさ五月闇  東京都 山本敏倖
【和田浩一選】  蟬穴に火薬の匂い法学部     東京都 石口 榮

秀逸賞

青時雨ことばは水でできている   静岡県 尾内以太
戦争をしている国へ鳥帰る     秋田県 小林万年青
花火果てしばらく闇にある凹み   東京都 関戸信治
巻貝の出口はひとつ放哉忌     山口県 平川扶久美
君のすこし淋しい顔に似たパセリ  東京都 市原正直
鞦韆の漕ぎかた銃の構えかた    埼玉県 小池令香
どの紐も引つ張つてみる春の暮   福岡県 山本則夫
顔が合ひ退屈さうな金魚買ふ    埼玉県 大場順子
時どきは雲乗り換へるあめんばう  大阪府 次井義泰
春愁をかたちにすれば横座り    静岡県 北邑あぶみ
すかんぽや不発弾なら家にある   福岡県 森 さかえ
村じゅうを空っぽにする運動会   徳島県 中川秀司
恐竜の肋の下の夏休み       千葉県 加藤法子
一頭も軍馬帰らず大夏野      群馬県 相澤礼子
田水張り村を切り絵のようにする  秋田県 小林万年青
おおぜいの太郎が死んだ敗戦忌   千葉県 秋谷菊野
蟻の列怠ける蟻がいて平和     東京都 石口 榮
真っ直ぐな線で金魚を考える    徳島県 油津雨休
アリバイは紋白蝶に会いしのみ   東京都 関戸信治
玉葱吊る平和の見える髙さまで   愛知県 井平幸雄
離してはならぬ風船持たさるる   福岡県 山本則夫
よく曇る憲法記念日の眼鏡     群馬県 石原百合子
蠛蠓の真ん中にゐる独裁者     三重県 伊藤政美
八月の蟻は足音立ててゐる     三重県 伊藤政美
ひと殺すきれいな言葉青葉騒   鹿児島県 松下けん
八月十五日まつすぐな子どもの目  岐阜県 辻 まさ野
戦争がこんなに見えて冷し瓜    山形県 大類つとむ

佳作入賞

甚平の口ぐせ先に逝きたがる    茨城県 井坂あさ
底紅やいつもミシンの音がする   愛知県 渡邊淳子
すこしづつ人が壊れてゆく日永   北海道 鹿岡真知子
しかられし子と先生の日なたぼこ  京都府 岩成天風
青信号炎天に人放たれる      福岡県 金子美智恵
八月のタオルは痛きほど乾く    兵庫県 三尾和子
麻酔中螢だったか風だったか    愛知県 田中の小径
クレヨンの淡い順から春となる   兵庫県 横田達夫
秋燈へむんずとつかみ牛産ます   埼玉県 増田信雄
蝸牛化石になりに行く途中     滋賀県 志村宣子
麦播いて戦場へ行く服を着る    埼玉県 尾堤輝義
次男から始まる家系原爆忌     石川県 岡田政信
身の内の紐怖ろしき更衣      兵庫県 佐藤日田路
空がまだ広かつた日の運動会    愛知県 加納寿一
八月の耳の後ろで乾く砂     神奈川県 植田いく子
春風をはさみ絵本を閉ぢにけり   大阪府 有松洋子
古書店は焦土の匂い大西日     東京都 石口 榮
立ち読みの梟がいる紀伊国屋    北海道 小川 桂
蛇籠編む「中村哲」といふ命    茨城県 菅原仲江
風船を持ち口説かれているらしい  埼玉県 後藤 章
母の日の花に囲まれいてひとり   北海道 平川靖子
一年生は居ません桜咲く校舎    東京都 関戸信治
北窓開くと世界が縮んでた    神奈川県 平池真里
紙風船突けば突くほど落ちたがる  福岡県 山本則夫
戦争は事実平和は蜃気楼      東京都 山本敏倖
ロボットがロボットつくる文化の日 大分県 今田幸正
風車ひとつおくれて廻りだす    東京都 利光知惠子
稲架襖どんと昭和が立っている   東京都 石口りんご
毛糸編む余生の色を足しながら   熊本県 矢嶋道子
父の家どこを開けても昭和の夏   三重県 前田秀子
卵焼寄せつつ春を惜みけり     埼玉県 後藤 章
死者たちが乗る朧夜の観覧車    茨城県 大野ひろし
昭和という長編だった凩よ     静岡県 北邑あぶみ
蓮の実の飛び出し空家また増える  秋田県 三浦静佳
しみじみと飲む水のあり原爆忌   埼玉県 石山秀太朗
迂闊にも鳴いてしまえば亀の負け  東京都 関戸信治
化粧して父が踊るよ秋祭り    鹿児島県 秋山青松
話しながら紫陽花となる女たち   東京都 赤澤敬子
濯いでも濯いでも八月の染み    福岡県 安部泰子
二丁目の桜三丁目にあなた     愛媛県 絵園 玲
体内に知らない部屋のある酷暑   愛知県 小南千賀子
にんげんの見える明るさ五月闇   東京都 山本敏倖
蟬穴に火薬の匂い法学部      東京都 石口 榮
折鶴に鋭角いくつ昭和の日     宮崎県 長友 巖
やさしさは団扇の風のとどく距離  三重県 種村正夫
鬼灯を鳴らすがらんと真昼あり   東京都 櫻木美保子
見えぬもの見えて女のサングラス  愛知県 宮地瑛子
マネキンの喜ぶ水着着せにけり   愛知県 杉山一川
裸木や裏口がよく見えている    三重県 伊藤眞知子
夏蝶に遅れて届く手紙かな     三重県 岩田典子
天に天の川ヒロシマに太田川    山口県 松原君代