金原 まさ子(特別賞)(きんばら・まさこ)

・昭和45年(1970年)「草苑」(桂信子主宰)創刊に参加。
・昭和48年(1973年)草苑しろがね賞受賞。
・昭和54年(1979年)草苑賞受賞。
・平成13年(2001年)「街」(今井聖主宰)同人。
・平成19年(2007年)「らん」(発行人、鳴戸奈菜)同人。
著書に、『あら、もう102歳』。
金原まさ子 『カルナヴァル』 自選五十句
ああ暗い煮詰まっているぎゅうとねぎ
やわらかな雪降っている魂(たま)揉みや
ひな寿司の具に初蝶がまぜてある
目かくしの土竜の指の花の香よ
ヒトはケモノと菫は菫同士契れ
猿のように抱かれ干しいちじくを欲る
身めぐりを雪だか蝶だか日暮まで
よもつひらさか花合歓は無口の木
月光の茗荷の花となり騒ぐ
フライパン重なり鵙の贄(にえ)増えた
衆道や酢味の淡くて酢海鼠の
雪が降る海鼠に靨(えくぼ)ちらちらちら
世の終り田螺わらうときにっと
雲の峯まっしろ食われセバスチャン
ぷいと来てバラを接木して去りぬ
どしゃ降りや身ぐるみ脱いで白百合は
エスカルゴ三匹食べて三匹嘔く
百万回死にたし生きたし石榴食う
青大将箪笥の前で臈(ろう)たけぬ
蟇またぐときごうごうと耳鳴りが
虎に蹤(つ)きすっと曲れば神隠し
筥(はこ)いっぱいの櫛焼く父よ秋の昼
山羊の匂いの白い毛布のような性
月夜茸へ体温の雨がどしゃぶり
琴墜ちてくる秋天をくらりくらり
時間切れです声を殺してとりかぶと
にこごりは両性具有とよ他言すな
冬バラ咥えホウキに乗って翔びまわれ
中位のたましいだから中の鰻重
牡丹へふたりの神父近づき来
鬼百合は父かもしれぬ蕊(しべ)を剪(き)る
十一月孔雀の首が日まみれよ
わが足のああ堪えがたき美味われは蛸
刑罰よからすうりの花月ざらし
芹に気をつけよ幻聴がついてくる
深夜椿の声して二時間死に放題
ハルポ可愛や生まれるときのウコン色
鶏頭たち深い話をしておるか
白磁に盛るひかりごけのサラダとさじ
聞えない耳なら石榴ぶらさげよ
月光やおのれとあそび藤たちは
別々の夢見て貝柱と貝は
流転注意そこは土筆のたまり場よ
父と流れて母と淀みて紅葉鮒
水が上って白菜が浮く石棺ごと
炎昼のかちっと嵌り死と鍵と
練羊羹まぶた重たく食べ了る
片腕の馭者をあらそい日と月よ
ああみんなわかものなのだ天の川
蠟燭の火が近づくよ秋のくれ
渡辺 誠一郎(わたなべ・せいいちろう)

・昭和25年(1950年)12月13日、宮城県塩竈市生まれ。
・昭和62年(1987年)佐藤鬼房に師事
・平成2年(1990年)「小熊座」同人
・平成3年(1991年)現代俳句協会入会
・平成8年(1996年)第一回小熊座賞
・平成10年(1998年)第三回中新田俳句大賞スウエーデン賞
・平成17年(2005年)宮城県芸術選奨(2004年度)
・平成27年(2015年)第十四回俳句四季大賞 (26年→27年に20150914訂正)
句集に『余白の轍』『数えてむらさきに』『地祇』
現在、「小熊座」編集長、日本文藝家協会会員
涼風は馬の睫毛にはじまりぬ
夕べには水を立たせる花あやめ
母の日の舌にしほがまくずれたり
影の数人より多し敗戦忌
早池峰の霊気に点る一位の実
滴りは深みに迅き出羽の国
阿弖流為の鼻梁を擦りぬ青山背
千年の沖行く闇の鯨かな
大寒の光塵として糞まりぬ
何処へと向かう旅塵や翁の忌
厳冬に生まれて軽き赤子かな
日本の冬木を鴨居として掲ぐ
黙約は鼬の濡れる夜にこそ
一片の雪消えなんと光なす
冬帝の眼窩でありぬみちのくは
万物は低きに生きて七日粥
淑気とは紙一枚の立つごとし
春の丘姉は小さな光食べ
隊列がまた近くなる五加木飯
電車から手を振るごとき金魚なり
父の日の父の仕方で米を研ぐ
川ばかりみて眉間から夏痩せす
海よりも淋しき水着みておりぬ
天麩羅の崩れるごとき大夕焼
歯石取る予約を忘れ太宰の忌
葦原の風の縺れに百鬼来る
あわれとは水飲みにくる菊人形
漂泊は鶴の骸を見るためか
みちのくの春日の痩せて鹹 (しおからき)
地球にも拍動のあり犬ふぐり
地の底に行方不明のさくら咲く
手を振れば千の手が振る桜の夜
盗汗かくメルトダウンの地続きに
奥州一之宮津波の後の水すまし
死んでなお人に影ある薄暑なり
祈りとは白き日傘をたたむこと
慟哭の一幹として裸木は
海をまた忘れるために葱刻む
東京に子猫のような余震来る
亡き友が泣くところまで行く春岬
海へ向く細脛ばかり半夏生
夏草の被曝に病める父郷あり
万緑の奥なり帰還困難区
泣くために海をみており野萱草
生きるとは帰らざること秋の風
一本の松は幣(みてぐら)秋の海
友の死をゆさぶるごとく海胆すする
フクシマの黒旗となりぬ黒牛は
断崖に立つごと冬の縁側に
夏草に沈みて地祗の眠りかな
高岡 修(たかおか・おさむ)

・昭和37年(1962年)鹿児島市に移住。十代の頃から詩・俳句・小説を書き始める。
・昭和43年(1968年)現代俳句誌「形象」に参加、最年少同人となる。前原東作、岩尾美義に師事。
・昭和45年(1970年)国立鹿児島高専電気工学科中退。
・平成 2年(1990年)第18回南日本文学賞受賞。(詩集)
・平成 3年(1991年)「形象」復刊と同時に編集長となる。
・平成 6年(1994年)前原東作死去により、「形象」主幹となる。
・平成13年(2001年)第27回南日本出版文化賞受賞。
・平成17年(2005年)第46回土井晩翠賞受賞。(詩集)
・平成19年(2007年)第27回現代俳句評論賞受賞。
・著書に句集『水の蝶』など6冊。詩集『水の木』『高岡修全詩集』など17冊。
・文庫に思潮社版現代詩文庫『高岡修詩集』・ふらんす堂版現代俳句文庫『高岡修句集』。
・現在、現代俳句協会理事・鹿児島県現代俳句協会会長・鹿児島県詩人協会会長・日本現代詩人会会員・日本詩人クラブ会員・日本文藝家協会会員・俳誌「形象」主幹・詩誌「歴程」同人。

・昭和43年(1968)6月22日、静岡県生まれ。
・平成20年(2008)母の影響により俳句を始める。
その後、ネット句会、神奈川県現代俳句協会のブロック句会、
現代俳句協会の火曜教室(講師:対馬康子)等で俳句の経験を積む。
・平成28年(2016)「青山俳句工場05」(代表:宮崎斗士)に参加。
・平成29年(2017)「奎」(代表:小池康生)入会
・現代俳句協会会員、神奈川県現代俳句協会幹事(横浜ブロック ブロック長)
「からだ」 なつ はづき
はつなつや肺は小さな森であり
五月来る鉛筆すべて尖らせて
夏あざみ父を許すという課題
森はふとひかがみ濡らし楸邨忌
右手から獣の匂い夏の闇
地に刺さる喪服の群れよ油照り
日傘閉じここに暮らしがあった海
ふと触れる肘ひんやりと原爆忌
身体から風が離れて秋の蝶
夕花野ことば何処へも飛び立てず
宝石箱に小さき鏡野分来る
母の背が饒舌になり鰯雲
チンアナゴみな西を向く神無月
まどろみの隙間ふくろう息継ぎす
次々とひとりのかたち綾取りは
バイオリンソロは佳境に冬木立
日向ぼこ世界を愛せない鳩と
我儘はひとことで足る冬かもめ
沈黙の明るく置かれ晩白柚
端っこの捲れる笑顔シクラメン
雨水とは光を待っている睫毛
ミモザ揺れ結末思い出せぬ恋
クッキーの微かな湿り鳥雲に
リストカットにて朧夜のあらわれる
花疲れ鳴りっぱなしのファの鍵盤
初鰹祖母が最後に笑った日
昨日から革命中のなめくじり
薔薇百本棄てて抱かれたい身体
蟻地獄母を見上げている少年
まなうらに白夜の記憶頰打たれ
◇主催:現代俳句協会 共催:荒川区
◇日時:2022年9月24日(土) 13時30分~16時45分(受付は13時より)
◇会場:ゆいの森あらかわ「ゆいの森ホール」
◇講師・講演内容:
①「知られざる十九世紀俳句史 桜井梅室の系譜」
秋尾 敏氏(「軸」主宰)
②「『渾沌の恋人(ラマン) 北斎の波、芭蕉の興』より、名句そぞろ歩き」
恩田侑布子氏(「樸(あらき)」代表)
■応募要領
◇応募句数:雑詠50句。題名付。未発表の作品に限る(他への二重投句は不可)。
◇応募方法:応募専用アドレス(9月下旬発表)へWord添付にて送信してください。
送信の際、件名に「第40回兜太現代俳句新人賞」と明記してください。
※昨年度より、郵送での受付をしておりません。
◇応募期間:令和4年10月1日~11月30日必着
締め切り日が大幅に変わりました。ご注意ください。
◇応募資格:年齢満50歳未満(締切日を基準とする)
ただし本年限りの特例として、
令和4年11月30日までに満50歳の誕生日を迎える者は応募可とする。
現代俳句協会員でなくても応募可。