俳句はいろいろ役に立つ
👤田中信克

健康寿命を伸ばすには何をすれば良いか?
私の答えは「俳句をするのが良い」である。
句会などに参加すると御高齢の方が多いのに驚くが、もっと驚くのは、それらの方々が実にお元気なことである。
大抵の方が実年齢より若く見える。
動きも会話もスムーズだ。
足腰や聴力の衰えで杖や補聴器が欠かせない方もいるが、選句の評などを求められると、はきはきとお答えになる。
私などは、還暦を少し越したばかりなのに、白髪と猫背で古希以上には見えるから、実に羨ましい。
「俳句は高齢者を元気にする」のは真実なのである。

句会には元気になる要素が詰まっている。
まず、句会場まで来なくてはならない。
電車に乗ったり歩いたり。
これが結構運動になる。
次に俳句を作らなくてはいけない。
脳と心を動かすのに持って来いだ。
選と同時に句評も考えなければいけない。
論理的思考の鍛錬である。
そして仲間と楽しくお喋りをして、句会場から帰宅しなければならない(でないと会場が困ってしまう)。
これもまた運動になる。
フィジカル面でもメンタル面でも刺激があり、認知症の予防などにも役に立つ。
俳句は文芸なので文科省の管轄だが、厚労省にも大いに旗を振ってもらいたいものだ。

俳句は他にもいろいろ役に立つ。
まず季語や季題を通じて、自然や風土に対する想いを深めることが出来る。
五七五と短いので、誰でも作ることが出来る。
ある種の娯楽性があるので仲間同士での機知や挨拶の交換も楽しめるし、町おこしの俳句大会のようなイベントコンテンツとしても有効である。
また歳時記に見られるように、歴史や芸術、文化史などの片々が凝縮されており、リベラルアーツの架け橋にもなる。
こんな良いことずくめのツールが他にあるだろうか?

しかし私が一番大事だと思うのは、俳句を通じて「思い遣りの文化」が醸成されるということである。
俳句は極端に短い詩形のため、言いたいことの全てが伝えられない。
従って読み手側が、作者の気持ちや句の背景に想いを寄せることになる。
また読者によって解釈が異なり、それらを認め合うことになる。
相互理解と多様性の認識。
複雑で不透明な社会においては、俳句のもたらすこの作用が一番役に立つのではないかと思うのである。

俳句は文芸である。
「役に立つ」という表現には違和感もあろう。
だが私は、俳句の持つこうした様々な機能を、現在将来の社会課題に照らしてもう一度考えてみたい。
そんなことを思っている。                                       

それぞれの想いそれぞれ富士雪解

田中信克(たなかのぶかつ)
1962年東京都生まれ。荒川区在住。
「海原」同人、「青山俳句工場」、「豆の木」所属
現代俳句協会会員