現代俳句2026年01月号掲載     写真提供:本郷義之

「百景共吟」より2句鑑賞

👤寺澤一雄

手袋の古層に雪を待っている
             対馬康子

「手袋の古層」という把握が、繰り返しの冬を重ねた時間と記憶の沈殿を感じさせ、静かな余韻を生んでいる。
まだ降らぬ雪を「待っている」と措くことで、季節への親和と内面的な温もりがにじみ、抑制の効いた美しい叙情が立ち上がっている。

手袋の片手が量子もつれかな
             西村我尼吾

「手袋の片手」という欠如の感覚を、「量子もつれ」という現代科学の比喩で捉えた着想が鮮やか。
離れていても見えぬ関係で結ばれる存在感が、冬の静けさにひそむ思念を広げ、ユーモアと知的余韻を兼ね備えた一句となっている。