金沢21世紀美術館
👤木暮陶句郎

結社「ひろそ火」の念願だった金沢2泊3日吟行会が実現した。
2月17日、新幹線を降り立つと金沢の雪解けが眩しかった。
一行十二名は鼓門で集合写真を撮り、賑わいを見せる近江町市場で昼食をとった。
そして前田利家公ゆかりの尾山神社の梅と雅楽の調べを五感に刻みつつ吟行をスタートしたのである。
3日間で金沢城や兼六園、東茶屋町から湯涌温泉までさまざまな吟行スポットを巡りつくす旅となった。
もちろん加賀の銘酒に酔い痴れ、鮨懐石や治部煮などの美食に舌鼓を打った。
金沢は九谷焼や大樋焼、加賀友禅や金箔づくり、加賀蒔絵など、伝統工芸が現在も日常生活の中に息衝いている街である。
ただし、その伝統を営々と守り続けるだけではなく、常に革新的な萌芽を孕むユニークさを持っている街なのだ。
その象徴が吟行2日目に訪れた「金沢21世紀美術館」である。
ガラス張りの円形建築はどこからも出入りできる「開かれた公共空間」を目指し、庭の芝生に置かれたさまざまなオブジェに触れたり中に入ったりすることが出来る。
建物と庭との芸術空間の連続性が高い評価を受けているのだ。
周囲のガラスを通して陽光が差し込む館内に一歩足を踏み入れると、さまざまなアートの展示に魅了された。
中でも見応えがあったのが金沢美術工芸大学の卒業制作展だった。
歴史と伝統のある工芸の町、金沢に育まれた学生たちの突き抜けた発想のアートには度肝を抜かれたのだった。
空間と素材で思想や体験を編むインスタレーション、彫金や陶芸、染色や木彫などの伝統的な技術を踏まえつつ身体感覚や環境意識を主題化し、素材そのものに批評性を持たせる試みも面白かった。
3日目も金沢の奥深さに触れ、夢のような時間を過ごす事ができた。
参加者は5回の句会を終えて、みな満ち足りた表情を浮かべながら兼六園にて散会となったのである。
今回の旅で私が最も刺激を受けたのは「金沢21世紀美術館」だった。
工芸美術の力とは一体何かを考えさせられた。
陶芸家として如何に土と向き合うべきか示唆に富んだ体験だった。
創作意欲を掻き立ててくれたのだ。
今後の作陶に大いに生かしてゆきたい。
今年は11月4日(水)から10日(火)に大阪近鉄百貨店あべのハルカス「アートギャラリー」。
12月には8日(火)から13日(日)まで銀座8丁目鮨処「久兵衛」並びの、平塚ビル5階「ギャラリー美庵」での個展が控えている。
両個展とも期間中は在廊しているのでお出かけ頂ければありがたい。
俳句と陶芸のコラボレーションをお見せしたい。
春の星こぼれて加賀の石畳
陶句郎
木暮陶句郎(こぐれとうくろう)
1961年群馬県生まれ。渋川市伊香保町在住
1998年、第9回日本伝統俳句協会賞、第10回花鳥諷詠賞、2009年、第22回村上鬼城賞正賞
現在、「ひろそ火」主宰、ホトトギス同人
群馬県俳句作家協会会長、日本伝統俳句協会理事、現代俳句協会評議員ほか
句集に『陶然』『陶冶』『薫陶』
伊香保焼陶句郎窯、Art Gallery Toukuro主宰。陶芸家