60までにしたい10のこと【前編】
👤岡田由季

59歳になってしまった。
私の父が亡くなった年齢だ。
酒により自らの肉体を滅ぼしにいった父とは状況が違い、幸いの健康体。
だが、年齢の近い友人知人の訃報が相次いだこともあり、自然と年齢や残り時間のことを考える機会となった。

そんなとき、「40までにしたい10のこと」というドラマを見た。
深夜帯のBLドラマだ。
普段テレビをあまり見ないが、配信サービスのお薦めにあがってきて、NHK俳句で堀田季何さんの回に登場する若手俳優が出演しているなぁ、と見はじめたところ、ハマってしまった。
しかしその内容及び感想についてはここでは割愛する。

着目したのはその10のリストの内容だ。
「何歳までに~」と、やりたいことリストを挙げることは他でもよくあるが、このドラマのリストは少し色合いが違って見えた。
人はこういう場合「3kg痩せる」「英会話に再挑戦」などの自己啓発的・努力目標的な項目をあげがちである。
しかしこのドラマのリストはそうではない。
「カフェですごいカスタマイズをする」
「シーパラ(八景島シーパラダイス)に行く」
など、具体的でささやか。
欲望に素直で、なんだか楽し気なのだ。
恋愛ドラマだから、その小道具的な感じなのだろうけど、うまくできている。

そんな、ちょっとしたきっかけや勇気があれば実行できそうな、達成しても別に偉くないけれど楽しい気分になれそうなリストを私も作ってみようと思った。
40歳はとうの昔に過ぎてしまったから、そう、60までに。

🙋60までにしたい10のこと

1️⃣タコパ(済)

これはドラマのリストからそのまま拝借した。
たこ焼きパーティー、つまり家でたこ焼きをすればよいのだ。
そういえば亡父は日曜日などに私たち子供のためにたこ焼きを焼いてくれた。
楽しかった記憶がある。
私自身も関西出身の夫と結婚した当初、1、2回はした。
久しぶりにやってみようか、ということで正月にさっそく実行してみた。

実際やってみて思い出したのは、たこ焼きを一人で焼くのは結構忙しい。
我が家では家事において手を動かすのは私一人。
裏返すのにバタバタ忙しくて、食べた気がせず、それでお好み焼きは作るけれどもたこ焼きは作らなくなってしまったのだった。
しかし考え方を変えれば、鉄板の全面を一度に使用しなくても少しずつ焼けばいいのだ。
そしてパーティーなのだから裏返す道具を二つ用意し、夫にも強制的に参加してもらえばいいのだ。
ゆっくり時間がある日にまたやってみたい。

2️⃣文楽を見る(未)

本場の大阪に来たのだから文楽を見よう。
そう思っているうちに20年が過ぎてしまった。
こういうことこそリストにでもあげないと実行できない。
一幕見でもいいから見に行こう。

3️⃣自転車の最高到達距離更新(未)

7年ほど前からクロスバイクに乗っている。
最初の頃は少し遠出もしたが、今は野鳥観察の足に使うのみで、遠くても10km超くらい。
今までで最も遠いところが、大阪南端の深日港というところで、そこまで20kmくらい。
もう少しだけ足を伸ばせば和歌山県なので、チャレンジをしてみたい。

4️⃣仁徳天皇陵(大仙古墳)を上から見る(済)

我が家からそう遠くない堺市に仁徳天皇陵はある。
しかし教科書で習った前方後円墳の鍵穴のかたちをイメージしていると、現地でがっかりすることになる。
古墳が大きすぎて、単なる森にしか見えない。
周りをぐるぐる周ってみても、いったいどこが方形でどこが円形かもわからない。
比較的高い建物の堺市庁舎の展望台から見ても、全容はつかめない。

それが、最近堺市が始めたガス気球に乗ると、見ることができるという。
それは是非乗らなければ。ということで初冬に決行した。
当日は快晴で紅葉が美しい。
しかし、一番高いところに到達しても、ぎりぎり鍵穴に見えるかどうかの角度。
もうちょっと高度が欲しいところ。
しかし、とりあえずここまでで満足しなくてはいけないだろう。
それ以上を望むならヘリをチャーターしなくてはならない。

その茂り前方後円墳の円
             由季

(後編へつづく)

岡田由季 おかだ・ゆき
1966年生まれ
「炎環」同人 「豆の木」「ユプシロン」参加
句集『犬の眉』『中くらゐの町』
第67回角川俳句賞