ポノポノ奮闘記Vol. 5
――破壊と創造、外の世界と向き合って――
👤ナカムラ薫
このところ、ハワイ島キラウエア火山の噴火が続いている。
島の呼吸が荒いのは、火口を棲家とする気まぐれな「女神ペレ」がお怒りなのである。
炎、稲妻、そしてダンス。破壊と創造を司る神である。
黒々と固まった溶岩の上にオヒアレフアが咲く。
可憐な赤い花をつけるこの低木は、ペレに殺された恋人たちの化身と伝えられる。
レフアに恋をしたペレは、彼の恋人オヒアへの嫉妬から二人を殺めてしまう。
悔いた女神は、二人を一本の木へと変えた。
罪と赦しを一つの幹に置くあたり、神話はいつも人間に似ている。

オヒアレフアとアパパネ(ハワイ固有の小鳥・二人の守神)
今回は、オアフ島北東部カイルアタウンの閑静な住宅街にある公立中学校Kailua Intermedia Schoolの日本語クラスで英語俳句のレクチャーである。
担当のJacob先生は、前号で紹介したEric先生のご紹介だ。
提案すると、その場で2クラス(30人と21人)3日間を提供してくださった。
決断が早く柔軟でオープンマインドの先生に感謝。

さて、Day1は強風大雨注意報。
この谷を含むハワイカイ一帯が停電した。
突風で窓がたわむ。
懐中電灯で照らしながら身支度をし、8時の一時限目に間に合うよう6時半に出発する。
ハワイでは12歳以下の送迎は保護者の義務で、朝の道路は通勤通学の車で溢れる。
しかも信号まで停電しているから、ハイウェイは動かない。
コオラウ山脈を突っ切るハイウェイではなく、Uターンをして、海岸線の細い道を選ぶ。
こんな日を喜ぶのは、命知らずのサーファーくらいだ。
40分ほど走り、山を大きく回り込むと風鳴りがどこかに消えてしまった。
同じ島なのにここの空は高く明るい。
空気が洗われて、ぴーんと貼ったような青空を雲がふわふわ笑ってゆく。
ぽわんとした平和が広がった。

カイルア・ラニカイビーチ(ハワイ語で天国の海)
学校に着くと、屈強なセキュリティガードの指示で駐車し、事務局で登録後に教室へ向かう。

校内に銃器を持ち込まないこと
教室ではホームルームが始まっていた。
お化粧に余念のない子、スナックを食べる子、自分たちの朝を正しく整えている。
先生はお構いなしに出欠をとり、教室の空気を動かし続ける。
重要なのは、ひとりひとりの耳に注意事項が流れ込むことだけだ。
ベルが鳴ると、日本語クラスの生徒たちが入ってきた。
私は授業を牽引しながらも先生を支える側に回ることにした。
この土地に俳句の種を蒔き、育てるのは、いずれJacob先生になるからである。
Day 1
準備
・言葉の共有(グループワーク)とドラフト作成
テーブルメイトと意見交換する。
「質問はある?」聞いてみる。
「賞品は何もらえるの?」
「あるよ。まだ秘密。」と返した。
名誉よりご褒美の方が効く年頃だ。

Day 2
創作と推敲
・できるだけ多く句を書く、そして言葉を省略する作業。
先生と私は、各テーブルを回り、ひとりひとりの推敲を手伝う。
テーマ「音」から、ハワイの子がまず思いつく景色は波。
The sound of waves is relaxing
半数以上の生徒の俳句はこの文から始まる。
「soundもrelaxingもいらないよ。《波》だけで分かるからね」削る方法を説明する。
「圧縮だね」
「究極のミニマリズム」と返ってきた。

別の生徒は、
music makes me calm down
から抜け出せない。
「あなたが最高に乗れる音楽は?」
大好きな歌手の名前をあげた。
その一行に、歌手の名前を置き換える提案をした。
途端に、映像と言葉のようなものが繋がったようで、彼女はloudの類語を探し始めた。
「分からない句になったみたい」不安げな子もいる。
スッキリ10単語で書かれ、切れが生まれている。
「音が聞こえるよ。すっごくいいよ!」褒めると表情がほどけた。
彼は学んでいた。
説明から離れること、文法を少し忘れることを。

Jacob先生の指導風景
Day 3
俳句アート仕上げ
休校となり、仕上げはJacob先生に託した。
彼は生徒と同じ目線で、楽しくゆるく、そして確実に導いてくれるだろう。
子どもたちが、日常の外の世界に繋がればいいなあ。
