
現代俳句2025年12月号掲載 写真提供:岡本宗佳
「百景共吟」より2句鑑賞
👤寺澤一雄
蟬時雨読経時雨となりしかな
坊城俊樹
激しい蟬時雨が、いつしか読経の響きへと転じてゆく感覚の把握が見事。
生のざわめきと鎮魂の静けさが一続きの時間として重なり、夏の深まりと心の内面の推移を静謐に描き出した格調ある一句。
天雷やすすきの中の測量士
谷口慎也
轟く天雷の劇的な気配と、すすきの中に佇む測量士という静かな人影の対比が鮮烈。
自然の大きな時間と人の営みの小さな精度とが一瞬に交差し、世界を測ろうとする意志の孤独と崇高さを印象深く浮かび上がらせている。
「薄墨桜」より1句鑑賞

現代俳句2025年12月号掲載 写真提供:徳武進吉
👤寺澤一雄
まだ父がサンタと知らず子の寝顔
望月哲土
「まだ父がサンタと知らず」という無垢な時間の輝きが、子の寝顔の静けさにやさしく重なる。
やがて訪れる気づきの前の、かけがえのない一瞬をとどめた視線が温かく、家族の愛情がしみじみと伝わってくる。