特集
「昭和百年/戦後八十年 今 現代俳句とは何か」
─ 全回答公開(1/全4回)─

「昭和百年/戦後八十年 今、現代俳句とは何か」を2025年の年間テーマに掲げた「現代俳句」は同年8月から9月にかけて現代俳句協会・評議員146人を対象としたアンケート調査を実施した。
8月上旬に電子メール・郵送により、全評議員に以下の質問項目を送付した。

アンケートの質問内容
1.私が推す「現代俳句」3人3句選

2.現代俳句の「現代」を時期として捉えると
①昭和以降
②第二次大戦終結後
③平成以降
④時期の限定はない
⑤その他(正岡子規以降など)
3.コメント

『現代俳句』では今春、協会副会長・理事・監事・事務局長全25人を対象に「五人五句選」とした以外はほぼ同様の内容でアンケート調査を実施している。
そのすべての結果は冊子版、ウエブ版の5月号、6月号で公開している。
今回の調査は対象の枠をさらに広げ、「今、現代俳句と呼ぶにふさわしものは何か」を問う趣旨。

今回の評議員アンケートに対しては、最終的に109人の回答(回答率74.7%)が寄せられた。

👤中内火星
1.私が推す三人三句
なんと気持ちのいい朝だろうああのるどしゅわるつねっがあ
             大畑等

飲食のあと戦争を見る海を見る
             吉村毬子

ポーランド三日四日五日間である
             阿部完市

2.現代俳句の「現代」は
③平成以降
3.コメント
松尾芭蕉からも正岡子規からも卒業しろ。あるいは忘れろ。

👤大森敦夫
1.私が推す三人三句
国籍は月と言い張る兎飼う
             堀口孝子
貯金しに来てゐる母子チューリップ
             轡田進
梅咲いて庭中に青鮫が来ている
             金子兜太
2.現代俳句の「現代」は
①昭和以降
3.コメント
作者の感性に任せて自由に作られたものが現代俳句だと思います。その時代を象徴する事象や独自性がある句が良い句だと感じます。

👤石橋いろり
1.私が推す三人三句
水脈の果て炎天に墓碑を置きて去る
             金子兜太
八月の赤子はいまも宙を蹴る
             宇多喜代子
灯をともし潤子のやうな小さいランプ
             冨沢赤黄男
2.現代俳句の「現代」は
➄戦争中から終戦まで
3.コメント
①戦争により、トラック島で餓死した人々への鎮魂の句。この句をもって生涯のテーマとなる反戦の意志が固まった。②長崎原爆の日に生まれた赤子への想い。③戦地で愛娘を想う自然な人間愛の句。

👤栗原かつ代
1.私が推す三人三句
父抜けてゆきし網戸を母も抜け
             松井国央
きのうより大きな真昼白山茶花
             大坪重治
七夕やゆびきりをして五十年
             細井みち
2.現代俳句の「現代」は
④時期の限定はない
3.コメント
何時の時代も、時間的にはすぐに過去になっていく。現代俳句の現代とは普遍的な今を生きている感覚。それをそれぞれの感性で詩的に詠んだものが現代俳句、と理解しています。選句は身近に大きな影響を受けた俳人たちの句を選びました。

👤足立攝
1.私が推す三人三句
落書きに芽の出るような妻と十年
             田原千暉
まだ風になれぬ少年青野にいる
             成清正之
星の深さに二階屋低し夜業終ふ
             足立雅泉
2.現代俳句の「現代」は
③平成以降
3.コメント
俳句は小説や絵画、音楽などの多ジャンルと同様に、現代であることは当たり前である。しかし俳句界には過去に確立した方法論を頑迷に守ろうとする勢力が存在するので、それらと区別するために、野暮を承知で現代俳句と名乗っている。

👤神山姫余
1.私が推す三人三句
梅咲いて庭中に青鮫が来ている
             金子兜太
身をそらす虹の/絶巓//処刑台
             高柳重信
コスモスなどやさしく吹けば死ねないよ
             鈴木しづ子
2.現代俳句の「現代」は
②第二次世界大戦後 と捉え回答したが、これからは平成以降ということも考えていく必要があると思った。
3.コメント
個人的に、作品に作者の血肉が感じられ、つくらずにはいられないという魂からの言葉の生成的なもの強く惹かれます。「現代俳句」はその時期だけでなく、根本的な在り方を問われる日がいつか来るのではないでしょうか。

👤芳賀陽子
1.私が推す三人三句
階段が無くて海鼠の日暮かな
             橋閒石
寒椿つひに一日のふところ手
             石田波郷
銀行員ら朝より螢光す烏賊のごとく
             金子兜太
2.現代俳句の「現代」は
④時期の限定はない
3.コメント
現在詠まれたものでなくとも、現代に通じる作品であれば現代俳句と読んでも良いと思っています。

👤佐藤文子
1.私が推す三人三句
還らざる者らあつまり夕空焚く
             穴井太
山ひとつ潰したあとの女郎花
             宇田喜代子
林檎の花散るは都の外ならん
             大井恒行
2.現代俳句の「現代」は
②第二次世界大戦終結後
3.コメント
戦後、活動した人たちの俳句のすばらしさによって現代俳句は、位置づけられたと思う。

👤岡田政信
1.私が推す三人三句
はじめから烟りでありし冬の姥
             中尾壽美子
寂しいは寂しいですと春霰
             飯島晴子
たらちねのははそはのはは母は羽羽
             正木ゆう子
2.現代俳句の「現代」は
④時期の限定はない
3.コメント
忘れられそうな微かなものことへの訴求が刺激を与えてくれるなら詩は未だ広がる。

👤武良竜彦
1.私が推す三人三句
陰に生る麦尊けれ青山河
             佐藤鬼房
祈るべき天とおもえど天の病む
             石牟礼道子
泥酔われら山脈に似る山脈となれず
             高野ムツオ
2.現代俳句の「現代」は
➄明治以降 「近代」の終わりも含まないと「現代」何か見えない。
3.コメント
今生きて在ることの手応えを感じる実存俳句こそ現代俳句。

👤藤田敦子
1.私が推す三人三句
悪女たらむ氷ことごとく割り歩む
             山田みづえ
車にも仰臥という死春の月
             高野ムツオ
戦争が廊下の奥に立つてゐた
             渡辺白泉
2.現代俳句の「現代」は
③平成以降
3.コメント
「悪女たらむ~」、俳句はきれいごとではないのだと認識。「戦争が~」戦後80年の今も戦前の感覚に共感する。「車にも~」多くを語らぬゆえに悲しみがいや増す。景だけでなく、そこに人が生き、感情が立ち上がってくる。それが現代俳句。

👤花房なお
1.私が推す三人三句
噴水にはらわたの無き明るさよ
             橋閒石
あめんぼと雨とあめんぼと雨と
             藤田湘子
棺一基四顧茫々と霞みけり
             大道寺将司
2.現代俳句の「現代」は
①昭和以降
3.コメント
自分の生きている時代観を反映させることと、新たな文体への挑戦こそが現代俳句と考える。但し先人たちの句業を受け継ぎ、発展させてこその現代と捉えたい。

👤松本勇二
1.私が推す三人三句
死にし骨は海に捨つべし沢庵噛む
             金子兜太
少年来る無新に充分に刺すために
             阿部完市
青柿打ちつづければ輝く放蕩
             大石雄介
2.現代俳句の「現代」は
①昭和以降
3.コメント自身の感覚や思いを決して曲げす、一心にそして自由に自己の信じる俳句を書いていく、書いてきたのが現代俳句。他者は傍観者に過ぎない。

👤五日市明子
1.私が推す三人三句
戦争が廊下の奥に立つてゐた
             渡邊白泉
おおかみに螢が一つ付いていた
             金子兜太
朝鵙や女むざむざとは死なぬ
             岡本眸
2.現代俳句の「現代」は
①昭和以降
3.コメント
3句目。作者は度重なる不運にも挫けず「朝」を創刊。その並々ならぬ決意と覚悟。男性の視線を意識した女性の俳句とは明らかに一線を画す。性別を超えた個の確立。

👤松末充裕
1.私が推す三人三句
頭の中で白い夏野となつてゐる
             高屋窓秋
彎曲し火傷し爆心地のマラソン
             金子兜太
路地裏を夜汽車と思ふ金魚かな
             摂津幸彦
2.現代俳句の「現代」は
➄新興俳句以降
3.コメント
ホトトギスの花鳥諷詠・客観写生の俳句スタイルに対抗して、俳句形式そのものの革新を目指した俳句群の中から時代別に選択した。現代俳句とは最短詩形の制約に対する言葉による永遠の戦いと考える。

👤松本千花
1.私が推す三人三句
原爆許すまじ蟹かつかつと瓦礫あゆむ
             金子兜太
じゃんけんで負けて螢に生まれたの
             池田澄子
春は曙そろそろ帰ってくれないか
             櫂未知子
2.現代俳句の「現代」は
④時期の限定はない
3.コメント
伝統俳句の講師より俳句の基礎を学んでいた頃に出合い、衝撃を受け、あこがれを抱いた句の中から特に好きな句、現代俳句だと思う句を挙げました。

👤福林弘子
1.私が推す三人三句
火の奥に牡丹崩るるさまを見つ
             加藤楸邨
泉の底に一本の匙夏了る
             飯島晴子
彎曲し火傷し爆心地のマラソン
             金子兜太
2.現代俳句の「現代」は
①昭和以降
3.コメント
昭和という激動と再生の時代を背景に、定型や季語にとらわれない自由な表現、自然から人間へと移る視点、社会の痛みや変化を映す句を選びました。作者の個性が強くにじみ出ており、時代の奥行きを鮮やかに照らしていると感じたからです。

👤春日石疼
1.私が推す三人三句
夏の海水兵ひとり紛失す
             渡辺白泉
或る闇は蟲の形をして哭けり
             河原枇杷男
キャバ嬢と見てゐるライバル店の火事
             北大路翼
2.現代俳句の「現代」は
①昭和以降
3.コメント
現代俳句の特質を、①時代や社会を詠む②人間の根源的な無意識を詠む③旧来の表現にとらわれないで自由に詠む、あるいはその可能性を追求するもの――と考える。しかしそのことすら曖昧であることも現代俳句の特質か。

👤東國人
1.私が推す三人三句
中年や遠く実れる夜の桃
             西東三鬼
正視され しかも赤シャツで老いてやる
             伊丹三樹彦
だんだんと本気になって花の散る
             津根元潮
2.現代俳句の「現代」は
④時期の限定はない
3.コメント
やはり、今までの花鳥諷詠から、逸脱した俳句が現代俳句で、当然、口語俳句がベースになると考えている。文語文法を解さない人がこれからは、主流になると思う。

👤浅川芳直
1.私が推す三人三句
夏の月肺壊えつゝも眠るなる
             石橋秀野
水の地球すこしはなれて春の月
             正木ゆう子
人類に空爆のある雑煮かな
             関悦史
2.現代俳句の「現代」は
②第二次世界大戦終結後
3.コメント
現代俳句協会設立の頃からを一応「現代」と考えた。現俳分裂前までは特に師系は考えず、それ以降は、師系の俳人が現代俳句協会設立時に加入していたかを一応の基準にした。

👤董振華
1.私が推す三人三句
梅咲いて庭中に青鮫が来ている
             金子兜太
白葱のひかりの棒をいま刻む
             黒田杏子
蝶墜ちて大音響の結氷期
             富澤赤黄男
2.現代俳句の「現代」は
➄明治以降 「近代」の終わりも含まないと「現代」何か見えない。
3.コメント
①昭和以降 各時期且つ自分にとってずっと耳に響く印象的な句です。

👤島松柏
1.私が推す三人三句
戦争が廊下の奥に立つてゐた
             渡辺白泉
八月の赤子はいまも宙を蹴る
             宇多喜代子
陽炎より手が出て握り飯摑む
             高野ムツオ
2.現代俳句の「現代」は
①昭和以降
3.コメント
二十世紀は戦争の世紀だったが、今世紀も戦火や自然災害は絶えない。直接は詠まなくとも、戦禍や災害を背景としていることが「現代俳句」の一つの要因と言えよう。

👤内藤ちよみ
1.私が推す三人三句
彎曲し火傷し爆心地のマラソン
             金子兜太
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの
             池田澄子
宇宙さみし一月のコーヒー店
             酒井弘司
2.現代俳句の「現代」は
④時期の限定はない
3.コメント
古きを尊び、新しきを求める。推薦句は特に感性の鋭い飛躍と、詩心の神髄に猛ている。時代を越えても、この感動は人々に受け継がれてゆく作品。

👤ナカムラ薫
1.私が推す三人三句
戦争が廊下の奥に立ってゐた
             渡邊白泉
おおかみに螢が一つ付いていた
             金子兜太
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの
             池田澄子
2.現代俳句の「現代」は
④時期の限定はない
3.コメントこの一瞬が現代であるならば、現代は常に更新されている。同時にその現代は、過去と未来も内包する。よって、「現代俳句とは何か」を考えた時、歴史的な時代で区分することに意味はない。その俳句が今響いているか、それだけである。

👤髙市宏
1.私が推す三人三句
戦争が廊下の奥に立つてゐた
             渡辺白泉
目つむりていても吾を統ぶ五月の鷹
             寺山修司
じゃんけんで負けて蛍に生れたの
             池田澄子
2.現代俳句の「現代」は
➄新興俳句以降
3.コメント
二ホトトギスの季題趣味からの完全な脱却から現代俳句が始まったのだと思う。

👤西谷剛周
1.私が推す三人三句
中年や遠くみのれる夜の桃
             西東三鬼
たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ
             坪内稔典
八月の赤子はいまも宙を蹴る
             宇多喜代子
2.現代俳句の「現代」は
④時期の限定はない
3.コメント
一読したら忘れないインパクト、他の追従を許さないオリジナリティ、社会に対するメッセージを感じる句を選んだ。常に権力と対峙する姿勢で俳句とも向き合っていたい。

👤川崎果連
1.私が推す三人三句
じゃんけんで負けて螢に生れたの
             池田澄子
あやまちはくりかへします秋の暮
             三橋敏雄
開戦日が来るぞ渋谷の若い人
             大牧広
2.現代俳句の「現代」は
①昭和以降
3.コメント
一読したら忘れないインパクト、他の追従を許さないオリジナリティ、社会に対するメッセージを感じる句を選んだ。常に権力と対峙する姿勢で俳句とも向き合っていたい。

👤久留島元
1.私が推す三人三句
三月の甘納豆のうふふふふ
             坪内稔典
カンバスの余白八月十五日
             神野紗希
春はすぐそこだけどパスワードがちがう
             福田若之
2.現代俳句の「現代」は
②第二次世界大戦終結後
3.コメント
文学史的には「現代俳句」は第二次大戦後という認識だが、自分が対峙すべき俳句としては誕生後、俳句を始めた時期、現代性などの観点で時代を代表する句を選んだ。