ポノポノ奮闘記Vol. 4
――そして、じぶんのこころがあたらしくなりましょう――
👤ナカムラ薫
ハワイの冬は、レイニーシーズン。
雨と曇天の日が続き、ときおり澄んだ陽射しがそよ風と連れ立って島にゆき渡る。
年明けのダイヤモンドヘッドは、水をたっぷり蓄えて、緑色の姿がいっそうやさしく豊かだ。

マノアの谷にHawaii Sakura Foundationが植えた大島桜がある。
12月7日――開戦日――を境に、花は少しずつひらき始めた。
日本の桜のように一気に咲きそろうことはない。
ぽつり、またぽつり。
間を置きながら、今もなお咲き続けている。
虹の谷マノアの気候に順応しながら、静かに形を変えながら、生き延びている。
健気だなぁ、と思う。

1月の週末は、ほぼ毎週のように主だった団体の新年会に出席した。
州知事、連邦議員、上院議員、日本国総領事、海上自衛隊の幹部など、そうそうたる顔ぶれが集うが、会場はアロハの空気に満ち、笑顔が行き交う。
余興は、和太鼓、日本舞踊、民謡そして演歌。
着物姿で「浪花めおと橋」を日本語で熱唱したご夫婦は、ともに弁護士。
ご主人は州財務のトップでもある。彼のサインがあって、はじめて予算が下りる。

今週の英語俳句レクチャーは、カイルアにある公立校Kalaheo High Schoolの日本語クラス。
生徒たちの親の多くは、近くのKaneohe海兵隊航空基地に勤務しているそうだ。
ここは、戦争に近い島なのである。
9年生(日本の中学3年生)から12年生までを、レベル1から4に分け。
今回はレベル2を担当した。ひらがな、カタカナが書けるクラスである。
Day1とDay2を私が受け持ち、Day3はエリック先生が引き継ぎ「俳句と俳画の作品」を完成させる。
1時限は80分。
余裕のある時間割が用意されている
そこで、言葉を出し合い気持ちをほぐす雑談のような“Brainstorming”と、気持ちを前向きにするための”俳句の発表とFeedback“にたっぷり時間をかけることにした。
Eric先生は事前に、日本のアニメ映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』を、生徒たちに見せていた。
会話の苦手な少年が、俳句によって心情を表現する物語だ。
エンディングで、攝津幸彦の「感情や少年海より上がりけり」が確かに胸に届く。
さらに先生は、俳句の成り立ちから現在までを、大好きなくまモンを登場させた教材を作った。
くまモンは言う。
「俳句はたのしい!こころのなかのえをかきましょう。そして、じぶんのこころがあたらしくなりましょう。」
「Vol.2」で紹介したNiu Valley Middle Schoolでは、「心の中」という言葉は「いけてない」と中学生に拒否られる。
それが高校生になると、すんなり受け入れられる。
成長とは、こういうところに現れるのだろう。
くまモン先生――否、エリック先生

Day1
俳句と俳画制作の下書き
日本語で短いご挨拶から始める。
クラスでは、日本語を話そうとする生徒が多いと聞いていたので、なるべく日本語を多く用いて話した。
英語俳句の作り方の説明は最小限にして、まずは全体の姿を掴んでもらう。
基本はゆっくり確認し、「表現は自由、俳句は自由」と、何度でも伝える。
「俳句より先に絵のイメージが浮かんだら、描いていいよ」そう言うと何人かの鉛筆がスッと動き出した。
言葉は、あとから追いついてくることもある。
その順番を、こちらが決める必要はない。
この場にこの生徒たちと一緒にいる。
Eric先生と私はそんな感覚である。

Day2
俳句の推敲と俳画
日本語でのご挨拶に始まり、俳句の作り方を復習し、推敲した俳句を発表しFeedback。
そして俳画制作へ。



「かおる先生、僕、もうできちゃったんだけど」笑顔で作品を差し出す生徒がいた。
英語俳句と自分で日本語に訳した句を俳画に配置している。
いいではないか!
「絵がちょっと荒いかな」と言うと、「これには、意味がある」と自信満々である。
もう、ちょと、突っついたら、「僕、怠け者なんだよ」なんて言い始めた。
そうか、ここまでが彼の今日の全力なのだ。
「OK. You are done.」(いいよ、完成だね)と伝えた。
ところが彼は、キョトンとして
「Dumb ?」(バカ?)……
つまり、私の発音が悪く、「OK. You are dumb」と聞こえちゃったらしい!
ほんと?
え〜〜、いくらなんでも、
え〜〜、そんなぁ〜〜
それって、人格否定ではないか!
ひょうきんで明るい子を、私は一瞬でネガティブにしてしまったのか……!?
人は、驚くほど簡単に負のパワーに引っ張られる……
いつもはスローな私だが、この時ばかりは即座に、「バカなんて言ってないよ。私の発音が悪すぎだね。Your artwork is well done. Good job !」
笑顔で言い直した。
また “done”を使って念を押した。
彼は、すぐに笑顔に戻った。
たまたま穏やかで笑顔の絶えないEric先生が隣にいて、はぁ〜〜、助かった。
教室の壁に貼られたEric先生手作りのポスター
「すぐ使える日本語、やばい」が頭にちらついた。

