創意工夫をかたちに
👤木暮陶句郎

 

陶芸家として何か新しいものを創ろうと日々悪戦苦闘していた10年前。
携帯電話が飛躍的な発展を遂げ、折り畳み式のものからスマートフォンに順次切り替えが加速していた。
音楽もストリーミング再生が一般的となりCDではなくスマホから直接聴く時代へと移行しつつあった。

そんなある日、エッグベーカー(陶器の目玉焼き器)の注文があり、直火に耐えられる粘土で手つきの小鍋を作った。
完成した小鍋に、たまたまスマホを置いて音楽を流すと陶器のなかで反響して音が柔らかく広がったのである。
これは面白いと、取手のところを大きくメガホンのようにしてスマホの座りのいい本体に付けて制作し焼いてみた。
それを陶句郎窯のギャラリーに並べ、時折音楽を流していると知り合いの特許に詳しい人が目にとめ「意匠登録」を勧められた。
手続きはなかなか複雑で音楽再生のための「スマートフォンスタンド」として正面と側面、上部と下部から見た図面を書き特許庁へ申請した。

そこから1年近くの時が過ぎたであろうか。
突然「意匠登録済」の通知が届いたのである。
2019年4月だった。
手作りのスマートフォンスピーカーは焼き上がると売れてしまい、なかなか量産には向かなかった。
それでも個展のたびに10個単位で作り、売り切れると作るという繰り返しを続けている。

2026年の今年も早速スマートフォンスピーカーを10数点制作した。
毎年恒例の高崎髙島屋での「群馬展」に伊香保焼陶句郎窯として出品するためである。
この稿が公開される1月14日(水)~19日(月)まで茶碗や花器、俳句陶板などと共に高崎髙島屋6階催事場にて展示即売をする。
16日(金)の午後と17日(土)以外は会場に出品作家とし常駐しているのでご興味のある方はぜひお越しいただきたい。

十指みな吾の分身陶はじめ
            陶句郎『薫陶』

木暮陶句郎(こぐれとうくろう)
1961年群馬県生まれ。渋川市伊香保町在住
1998年、第9回日本伝統俳句協会賞、第10回花鳥諷詠賞、2009年、第22回村上鬼城賞正賞
現在、「ひろそ火」主宰、ホトトギス同人
群馬県俳句作家協会会長、日本伝統俳句協会理事、現代俳句協会評議員ほか
句集に『陶然』『陶冶』『薫陶』
伊香保焼陶句郎窯、Art Gallery Toukuro主宰。陶芸家