少し反る
👤林和弥

風船を括りし枝や少し反る
              若林哲哉

素直に読めばこの句は、誰かが忘れた風船を括り付けてある枝がある。
その木の枝は少し反っているというものである。
直観的でわかりやすいが広がりのあまり見られない句と評されてもおかしくない。

しかしこの句の場合、中七の「や」によって場面の切り替わりを予期させるため句全体に空間が生まれる。
その空間のなかで枝が反っているので、春の柔らかな日差しの中で若葉をつけた枝がみえてくる。
それにより、枝に括りつけられた風船がぷかぷか浮かんでいる景が鮮明に見えてくる。

新卒同期

七月や塾のロゴ入り青鞄
白百合や頑固にこする襟汚れ
横雨の帰路を地虫の鳴きにけり
スカートを風に吹かれて案山子かな
蟷螂の鎌に躊躇ひある如し
閉園の海豹へ冬銀河かな
新卒同期の退職願冬日和
人として声をあげたる冬怒涛

林和弥
「銀竹」所属、「鷹」同人

 


番茶
👤滝口然

初めて番茶という言葉の意味を知った。
今までずっと番頭さんが飲むお茶のことだと漠然と思っていたが、よく考えたらそんな言葉が今日まで残っているはずがない。
番茶も出花という言葉がある通りあまりいいものとして扱われることはないが、言葉としては古風な感じがするしなんか通っぽい響きなため私の中では好きなものの部類に入る。
そのため、私には番茶にしたいものがいくつもある。

一つ目は星のカービィだ。
1992年にゲームボーイで発売されて以来、30年以上の時を経て人々に親しまれているピンク色のキャラクターはお湯に浸かると良い香りがすると思う。
毎日を食事か日向ぼっこをして過ごしていそうな同キャラクターは枯草やお花の香りがする味わい豊かな番茶になってくれるのではないかと考えられる。

また、コピー能力ごとに風味も変わるため、毎日その日の気分に合わせて好みの味を選べるのも魅力的だ。
ここからは個人的な推測になってしまうが、おそらくカッターやソードは万人受けする食事に合わせやすい風味でビームとミラーは甘め、ボムはスパイシーで最も通好みなのがホイールだと私は考えている。
この辺りは人によって感じ方が違うと思われるので、誰でもきっとひとつは自分が気に入る味を見つけられるはずだ。

二つ目は米津玄師だ。
令和を代表するヒットメーカーの彼は「Lemon」や「パプリカ」から分かるように旨みのある美味しいお茶を提供してくれるのではないかと思う。
米津玄師はキャリアの中で何回か風味が変わっているため、例えばボカロP時代はダークでエッジの効いた味わい、2018年頃はメロウであっさりとした味わいなど異なった風味を楽しむこともできる。
個人的には最近の「さよーならまたいつか!」とかが好きなので煎ってお茶にするなら今だと思う。
また、彼はコラボによる楽曲も多いため、菅田将暉やDAOKOらの風味も加わった特別感のあるお茶もいただくことができるだろう。

三つ目は蟹の甲羅だ。
炙ってお湯に入れたら美味しそうだと思う。

まだ他にも番茶にしたいものは色々あるが、紙幅の都合でここには書ききれなかった。
あなたもカービィのハイジャンプをお茶にするとどんな味になるかを想像して私に教えてほしい。
よろしくお願いします。

水鉄砲

蛇はより長い電柱が好き
喪服から戻り投げ合う籠枕
蜘蛛よりも蜘蛛の巣生きて江東区
天国は水鉄砲が弱すぎる
きつつきの小さなげっぷ休館日
壮年層一式揃え冬の川
電柱を引き抜く仕事一葉忌
朧夜を来て九索に似た献花

滝口然(たきぐちぜん)
俳句結社『街』『楽園』所属
第4回楽園賞