探索する
👤木村聡雄

 

鳥たちが夜を追い求めるという作品について前回書いたが(2025年9月号)、動物たちが何かを探り続けるのは空の上だけではない。
われわれの暮らすこの地上の足下に目を向ければ、ここでも動物たちの探求心は活発である。
ごく身近な蟻も常に何か追い求めている。作品中の蟻はかたつむりの殻を見つけるやその奥の奥まで調べ上げている。
作者はその様子を「探索」(explore) という語で表した。この言葉によってこの蟻の行動はわれわれ人類の活動とも繋がって行くようである。
われわれ人類は大昔以来、あの山や海の向こうには一体何があるのかといった好奇心に導かれて活動範囲を広げてきた。
水平方向なら新大陸、下方へは海の底へ、そして上方は世界最高峰、さらにはそのはるか上の宇宙へと探求心は今日まで尽きることがない。
こうした実地の探索の他にもフランスの作家ジュール・ベルヌはすでに19世紀に文学的想像力の中でさまざまな場所への探索を実行した。
『地底旅行』、『海底二万里』から『月世界旅行』、『月世界へ行く』などの作品は彼の頭の中での探求の記録として残されている。

さてこの蟻にとってかたつむりの殻は、(小さな小さな)新大陸発見あるいは月世界探索のようにスリリングな冒険となっただろうか。

(Japanese translation: Toshio Kimura, Albatross, 2000-2001, Romania)
[Exploring  Toshio Kimura]