夜を追う
👤木村聡雄

鳥が夜を追い求めるという不思議な句である。
実際に夜行性の鳥としては、梟や夜鷹などが獲物めがけて闇に紛れて飛ぶことは知られているが、ここでは夜に活動する鳥の話ではない。
普段から鳥たちが明け方に鳴き始める声に気づくことがある。
そうした仲間たち同様に、まさに夜明けとともに目を覚まして集まり、おそらくは捕食のために飛び立とうとしているごく普通の鳥たちを書いている。
東の空は朝焼けに染まっているとはいえ、西はまだ暗い。
この集団はもしかすると西の方に向かって飛んで行ったのだろうか。
それを見た作者は、鳥たちがあたかもまだ暗い空をめざし、急げば夜の世界に追いついてしまうほどだと感じたのだろう。
それを「夜を追う」と言い切った。
鳥たちと遠くのまだほの暗い空についての新鮮な視点の作品である。

(Japanese translation: Toshio Kimura, Albatross, 2000-2001, Romania)
[Chasing the Night  Toshio Kimura]