『現代俳句』では「昭和百年/戦後八十年 今、現代俳句とは何か」を2025年の通年テーマに掲げ、その一環として、副会長・理事・監事・事務局長の25人を対象にアンケートを実施した。調査時期は2025年3月~4月、回答率は100%。結果について概要を整理する。
アンケートの質問内容
1.私が推す「現代俳句」五人五句選
2.現代俳句の「現代」を時期として捉えると
①昭和以降 ②第二次大戦終結後 ③平成以降 ④時期の限定はない ⑤その他(正岡子規以降など)
3.コメント
●作品別
「私が推す『これが現代俳句』五人五句」という質問に対し全員が五句を選び、重複を考慮すると105句が挙がった。うち2人以上から推された句は10句あった。
最高点は4で5句に達した。
蝶墜ちて大音響の結氷期 富澤赤黄男
頭の中で白い夏野となつてゐる 高屋窓秋
戦争が廊下の奥に立つてゐた 渡邊白泉
梅咲いて庭中に青鮫が来ている 金子兜太
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの 池田澄子
3点句はなく、2点句として続いたのが以下の5句。
広島や卵食ふ時口ひらく 西東三鬼
雲秋意琴を売らんと横抱きに 中島斌雄
銀行員等朝より螢光す烏賊のごとく 金子兜太
八月の赤子はいまも宙を蹴る 宇多喜代子
地下鉄にかすかな峠ありて夏至 正木ゆう子
●作者別
作者別にみると、66人の作品が登場した。うち複数に選ばれた作者は24人。推した選者の人数では
13人 金子兜太
7人 富澤赤黄男
6人 池田澄子
4人 松尾芭蕉(星崎の闇を見よとや啼千鳥など)、正岡子規(鶏頭の十四五本もありぬべしなど)、西東三鬼、高屋窓秋、渡邊白泉、高柳重信(身をそらす虹の/絶巓/処刑台など)
3人 高浜虚子(川を見るバナナの皮は手より落ちなど)、三橋敏雄(鐵を食ふ鐵バクテリア鐵の中など)
2人 日野草城(見えぬ眼の方の眼鏡の玉も拭くなど)、中村草田男(金魚手向けん肉屋の鉤に彼奴を吊りなど)、加藤楸邨(雉子の眸のかうかうとして売られけりなど)、中島斌雄、桂信子(衣をぬぎし闇のあなたにあやめ咲くなど)、田川飛旅子(遠足の列大丸の中とおるなど)、鈴木六林男(暗闇の眼玉濡さず泳ぐなりなど)、阿部完市(少年来る無心に充分に刺すためになど)、有馬朗人(光堂より一筋の雪解水など)、宇多喜代子、攝津幸彦(幾千代も散るは美し明日は三越など)、正木ゆう子、神野紗希(コンビニのおでんが好きで星きれいなど)
●時代別
各句の時代性を考える場合、制作もしくは初出発表のタイミングをとらえるのがふさわしく、『昭和俳句年表』が刊行済みの昭和45年までは概ねその原則に従った。ただ以後は大多数の句で明確化しやすい掲載句集の刊行年を基準に措定せざるを得ないなど、一貫性と厳密さに欠ける暫定的集計にとどまっている感は否めない。
それを前提として、年号別(江戸期は一括)にみると江戸4句、明治6句、大正1句、昭和(戦前戦中)15句、昭和(戦後~高度成長期)47句程度、平成23句程度、令和9句程度となった。全体のほぼ9割は昭和以降、4分の3は第二次大戦後の作だった。
西暦では、1930(昭和5)年以降、現在に至る各10年紀からはまんべんなく5~15句程度が挙がった。
●回答者の「現代」観
今回は次の択一形式の設問にも回答を求めた。
現代俳句の「現代」を時期として捉えると
①昭和以降 ②第二次大戦終結後 ③平成以降 ④時期の限定はない ⑤その他(正岡子規以降など)
回答は①4人、②6人、③1人、④9人、⑤5人。⑤には時期を示す記入欄を設けたが、「碧梧桐以降」「新興俳句以降」「馬酔木以降」「子規以降」などの回答が寄せられた。
(編集部)