その後のあかすり 

三木基史

前回の続き】

 一般的な韓国式あかすりサービスは30分から90分程度のコースから選ぶ。コース内容は、あかすり+洗体+洗髪+オイルマッサージがセットになっている。不思議なことに、全国どこのあかすり施設でもほとんど同じ内容。強いて言うなら、使用するあかすりグローブがソフトかハードかを選べたり、紙パンツを履くかタオルで隠すかの違い程度しかない。

 一度でもあかすりを体験した人は実感しているはずだが、あかすり後は全身の肌がつるつるすべすべになっている。私のような関西のおっさんの肌がつるつるすべすべになったところで仕方がないのは重々承知。しかし日頃からしっかり身体を洗っている人でも一皮むけた感覚が味わえる。消しごむカスのような垢が驚くほど出てくるのだ。

「お兄さん、あかすり初めて?」

「月に1度はしてるよ。」

「ほんと?こすってもこすっても垢でるよ。30分コースじゃ終わらないよ。」

「そう?じゃあ10分延長で。それからお姉さんを指名に変更で。」

 お決まりのやりとりである。本当は始めから40分コースで良いのだが、お客さんの少ない日は延長が出来る。セシンサは歩合給で働いているケースがほとんどなので、延長すると喜んでくれる。さらに指名料(300円から500円程度)は全額がセシンサの手元に入るので、俄然やる気を出してくれる。セシンサの笑顔が眩しい。ただ、上手な人とそうでない人は当然いる。上手な人は手足の指先までしっかり丁寧にこすってくれる。そうでない人は胸・背中・太腿など、面積が大きくこすり易い箇所ばかりに集中してしまう。あかすり道も奥が深いのだ。

 私は担当のセシンサとたくさん話をする。こちらが素っ裸なので安心感を与えるのかもしれないが、あかすり業界のことからセシンサの故郷や家族のことまで話題は多岐にわたる。ほとんどのセシンサは私よりも年配で、「この仕事は好きだけど、身体が大変なので、あと5年できるかなぁ」なんてボヤきをよく聞く。この業界も後継者不足が深刻なのだ。私はあかすりこそ最良のエステティックとリラクゼーションだと思っているので、読者の方々にもぜひ一度体験してほしい。そして、あかすり業界が盛り上がってくれれば幸せだ。

 

極月の女の肌に湯のぬめり  基史