駅舎 南北海道 都賀由美子
電話機はさみどり永き日の駅舎 都賀由美子
撮影:都賀由美子
句会を終え一両車に乗って帰宅する時のこと。函館本線の大沼駅で通過列車待ちをしていた。駅には日が当たっていた。夕方ではあったが眩しい光だった。
ここは無人駅、ホームにも駅前にも誰もいない。目に入ったのが駅前の公衆電話だった。輝いていた。さみどりに。電話機ってこんなに綺麗な色だったかしら。携帯電話を持っていなかった私は、公衆電話をいつもチェックしていた。この電話機は勿論知っていた。使ったこともある。が、何処にでもある公衆電話の一つとして見ていた。光を浴びた電話機は、ここに、こうして存在を主張していた。さみどりはこの電話機のこの時の特有のものだった。懐かしささえ覚えた。
今電話機は雪の中、相変わらずポツンと立っている。輝く時はもう少し待とう。
井波風 富山 高田 実
朧夜の明くればはげし井波風 高田 実
富山県井波 撮影:髙田 実
井波は富山県南西部南砺市の東北端に位置し、背後に世界文化遺産五箇山合掌造り集落が控えています。そして真宗寺院瑞泉寺を中心に発達した門前町です。「日本遺産」にも認定された木彫刻の町として観光客を集めています。
そのような井波地域は古来より、春に数回風速50mを超え、台風をも凌ぐ大風が吹きます。太平洋高気圧からのフェーン現象が起こり、1000m足らずとはいえ起伏に富んだ岐阜県から富山県に連なる山塊で勢いを増します。分水嶺で長良川と袂を分かつ庄川の深い渓谷がさらにその風を増強し、砺波平野の扇頂部にある井波地域で一気に開放されます。その風を土地の人々は井波風と呼んでいます。
古くは山腹にたくさんの風鎮めの不吹(ふかん)堂を建立し、平野部には散居村といわれる集落形態と大風から家を守る屋敷林などが発達しました。
毎年6月に行う、井波風をおさめるお祓いの様子 写真提供:南砺市観光協会 井波観光案内所
天鈿女命 宮崎 吉村 豊
われ鈿女峰の桜に浮かれけり 布施伊夜子
撮影:吉村 豊
アマノウズメノミコトは『古事記』では天宇受賣命、『日本書紀』では天鈿女命と記される。
アマテラスオオミカミがスサノオノミコトの狼藉に怒って天岩戸にお隠れになった。真っ暗な世界に困った神々の作戦でアマノウズメノミコトは大きな桶を踏み鳴らして露出度の高い舞でヤンヤの喝采を浴び、これを不審に思われアマテラスオオミカミは無事にお出ましになられて明るい世に戻った。
高千穂町の天岩戸神社の東本宮の鳥居の右手にはアマノウズメノミコトの舞姿の像が建っている。また、同町内の荒立神社には夫君の猿田彦命とともに祀られており、神話時代からの芸能の神様として小さな社ながら全国からの参詣がある。