第24回現代俳句協会年度作品賞は 高木宇大「目覚めさす」 に決定しました

当協会では、7月15日(土)協会事務所において第24回現代俳句協会年度作品賞の選考委員会を開催し、応募187編から下記のとおり授賞作品及び佳作を決定しましたのでお知らせいたします。
この賞は、当協会会員の日頃の作句活動の中から生まれた優れた作品を顕彰するために制定されたもので、他賞及びコンクールでの入選作を除く、昨年1月から12月迄の間の既発表または未発表の作品計30句の募集作品を対象とするものです。 

第24回現代俳句協会年度作品賞  高木 宇大(たかぎ・うだい) 「目覚めさす」30句
佳 作 石井 清吾(いしい・せいご)「転居」30句

◎受賞者のプロフィールは次のとおりです。
◇高木 宇大(本名 高木 宏幸) 1955年(昭和30年)1月2日 福島県生まれ
◆俳句歴
2001年(平成13年)萬緑(主宰 成田千空)入会
2008年(平成20年)萬緑新人賞受賞
2018年(平成30年)銀化(主宰 中原道夫)入会
2020年(令和2年) 雪華(主宰 橋本喜夫)入会
◆現在
銀化同人、雪華同人、現代俳句協会会員、俳人協会会員

◇選考委員(五十音順)
浦川聡子、江中真弓、こしのゆみこ、仲 寒蟬、山﨑十生

◇表彰式
令和5年11月3日(金・祝)午後1時より開催予定(於・「東天紅」上野店)の第60回現代俳句全国大会の席上にて予定しております。

第24回現代俳句協会年度作品賞受賞作品

目覚めさす 高木宇大

たつぷりの夜を引き連れ白鳥来

死にぎはの音とはこんなセロリ噛む

鰭酒や吾にも捥がれしものありて

木菟を飼つてゐさうな母の部屋

冬あたたか犬には犬の友のゐて

酢海鼠の幾星霜を噛みほぐす

つぎつぎと兎抱かるることに慣れ

鮟鱇の吊られし口の真くらやみ

シクラメン咲いて安楽死の誘ひ

兜煮のほほ肉ほろと涅槃西風

春一番東京にみな攫はれて

菜の花や水の流れてゐる根元

幾たびも役者は死んで朧月

桜東風古き戸板に魚干され

花吹雪船待つやうなしづけさに

休日を来て麦秋に乗り換へる

長梅雨やめし粒沈む洗ひ桶

六月や地球しづかに病んでゆく

蛍火や耳咬むやうに囁かれ

海の日の母のおほきないなり寿司

平熱を測られてゐる心太

槍投げに雄叫び加へ雲の峰

北よりの汽車濡れてゐる夏の月

鬼百合や鉄瓶に疣びつしりと

小鳥来る水かげろふを遊ばせて

白桃を放ちて水を目覚めさす

警官のやうに濡れたる鶏頭花

月の香の残るけものを匿へり

点眼の瑞々しきを雁渡る

湾を出て右舷に架かる冬銀河