第23回現代俳句協会年度作品賞は 松王かをり「海原へ」 に決定しました

当協会では、7月16日(土)協会事務所において第23回現代俳句協会年度作品賞の選考委員会を開催し、応募170編から下記のとおり授賞作品及び佳作を決定しましたのでお知らせいたします。
この賞は、当協会会員の日頃の作句活動の中から生まれた優れた作品を顕彰するために制定されたもので、他賞及びコンクールでの入選作を除く、昨年1月から12月迄の間の既発表または未発表の作品計30句の募集作品を対象とするものです。

第23回現代俳句協会年度作品賞  松王 かをり(まつおう・かおり) 「海原へ」30句
佳 作  川村 五子(かわむら・ゆきこ)「冬帝の投網」30句

受賞者のプロフィールは次のとおりです。

◇松王かをり(本名 松王 香) 
1956年(昭和31年)1月16日、奈良県生まれ。
◆俳句歴
2004年(平成16年)津田清子の俳句教室(朝日カルチャーセンター)で俳句を始める。
「圭」(主宰・津田清子)入会。(2012年8月号にて同誌終刊)
2013年(平成25年)「銀化」(主宰・中原道夫)入会。
2015年(平成27年)「銀化」奨励賞受賞。
2017年(平成29年)第37回現代俳句評論賞受賞、受賞作品は、
「未来へのまなざし」―「ぬべし」を視座としての「鶏頭」再考― 。
「雪華」(主宰・橋本喜夫)入会。
2018年 (平成30年)「耳の曲線」で第18回中北海道現代俳句賞受賞。
2022年(令和4年) 北海道現代俳句大会 大会賞受賞。
◆現在
「銀化」同人、「雪華」会員、俳句集団【itak】幹事、現代俳句協会会員、
中北海道現代俳句賞選考委員、俳句甲子園北海道地区大会審査員。
◆著書
『最果ての向日葵—俳人藤谷和子に聞く』(2021年)

◇選考委員(五十音順)
浦川聡子、江中真弓、こしのゆみこ、佐藤映二、原 雅子、山﨑十生

◇表彰式
  令和4年11月12日(土)午後1時より開催予定(於・JR九州ステーションホテル小倉)の第59回現代俳句全国大会の席上にて予定しております。

◇お問い合わせ
現代俳句協会事務局  電話03-3839-8190

第23回現代俳句協会年度作品賞 

「海原へ」 松王かをり

指先にかすかな磁力鳥帰る        
キャンピングカーこんもり春の雲のせて  
ものの芽に薄きショールのひつかかる   
不意打の訃音はリラの香とともに    
リラ冷の部屋嵩低く死は置かれ      
剪り落とす茎よりあふれ朱夏の水     
玻璃片の五月の空を掃き寄する      
青蔦や文豪の恋陳列す          
蛇の衣きつく捩るるひとところ      
白日傘閉づ夕星を巻き込んで       
秋の浜海は巻かれて貝の中        
天網に引火しさうよ星奔る        
流星を容れて淡海(あはうみ)なほしづか       
背後より目隠しの指桃匂ふ        
桃ひとつ置けば闇夜のやはらかき     
ふれ合うて干さるる傘やうろこ雲     
街は船傾ぎて秋の灯をこぼす       
長き夜を目覚むるたびに雨の中      
サフランや星の死はみな爆死なり     
火の山の水を引き込み冬菜畑       
麺棒も午後の冬日もころがして      
連弾の交差する腕クリスマス      
盗み見をポインセチアが邪魔をする    
風の輪唱いつよりか夜の雪        
木々の隙びつしりと立つ寒の闇   
夜汽車とならむ雪原をゆく頃に   
春寒の手に温めて化粧水         
古雛いくつのいくさ見て来しか      
水温む船の汽笛はドのシャープ     
雪解川体(たい)をほどきて海原へ