田中朋子(たなか・ともこ)

・1954年群馬県生まれ。射手座。
・1990年11月より「麦」へ入会。故田沼文雄、橋爪鶴麿に師事。
 以後、綾野道江、斉田仁、両氏に指導を受ける。
・1996年「麦」同人。
・1999年現代俳句協会入会。
・2001年より獨協大学オープンカレッジ「俳句実作と近・現代俳句鑑賞」に参加。講師綾野道江。
・2005年句集『ぶりっ子』を刊行。
・2006年より現代俳句協会火曜教室に参加。講師橋爪鶴麿、対馬康子。
・2009年「句会21」発足に参加。指導対馬康子。
・2011年「麦」収穫祭第一位受賞(三十句)。現在に至る。

・現代俳句協会員。

第12回現代俳句協会年度作品賞受賞作品
「揺れている」  田中朋子
 
月までの距離梅干しを裏返す
似たような家似たような夏の虫
青葉騒塩たっぷりと茹で玉子
蛇衣を脱ぐ半熟という脆さ
ペダル踏み込んで五月を傾ぐなり
六月をジグザグ進むミシン針
とれそうなボタン雨から雪になる
豆撒きの豆の一粒サハリンへ
セーターに小さな毛玉父母いない
手袋の片一方に難がある
ふと外す指輪の湿り遠い火事
春ショールするり汽笛が遠ざかる
晩夏光みな右側に降りるなり
揺れているのは新涼の旅心
海風を纏い秋暑を折り畳む
やきそばの青海苔まばら原爆忌
冬の月となりの席が空いている
寒波来るばりばり破く包装紙
初売りのきれいな箱の上に箱
菜の花の黄が揺れ女よく笑う
ぶらんこを小さく漕いで人見知り
寒戻りけりペッパーのひと振り目
字余りのような叔母です夏座敷
春の地震鞄の底をまさぐりぬ
里芋のぬめり三流週刊誌
雪催すぐに視線を逸らされる
石ばかり松ばかり見て二月逝く
辛夷満開一呼吸二呼吸
女郎蜘蛛まだ半分は素顔なり
新緑や塗り替えている壁と夢
 
※句は現代俳句データベースに収録されています。
※受賞者略歴は掲載時点のものです。