俳句と筋トレについて
👤常然
歳時記が三周目となった。
俳句を始めてまだ間もない私が、このような場で作品とエッセイを寄稿させていただくことを感謝申し上げます。
ありがとうございます。
真宗僧侶である私は様々なかたちで布教活動をさせていただいています。
「布教」は僧侶にとって、何よりも大切な活動であると思っています。
普段、私は主に節談説教というスタイルでその布教を行なっています。
「節談説教」というのは御高座にあがり、所々の大事な部分に「節」として抑揚をつけて、リズミカルに印象づけをしていく真宗の伝統的な手法です。
落語や講談などの元となったとも言われております。
私自身は説教台本を書く時に、その「節」に重い言葉を持ってきたり、間が欲しいときは五七調、流れるような速度が欲しいときは七五調などと使い分けながら構成するようにしています。
ある時、テレビで夏井いつき先生が「俳句は筋肉だ」ということをおっしゃっているのを目にして、なるほど俳句や短歌を修練すれば「節」の筋トレになるんだな…と考えました。
五七調や七五調の筋トレとして俳句、短歌に興味を持った私は、本屋さんで堀田季何先生の「俳句ミーツ短歌」という本に出会いました。
こうして俳句沼にハマってしまったのです。
夏井いつき先生や堀田季何先生の句集を購入して夢中になって読み耽りました。
「楽園俳句会」に入会して、「おウチde俳句くらぶ」「伊月庵通信」の会員にもなりました。
僧侶なのに「楽園」の住人となり「組員」と呼ばれることに可笑しみを感じながら、これからも続けて行きたいと思っております。
「薄氷にドローン」
母衣打ちやSOSのモールスで
乞丐の自覚はあるか涅槃西風
Z世代闇に覚醒する極暑
幾つかの禁忌のありて月の蝕
偃月や祷る戦火の子どもたち
流星であつて欲しいと戦火の夜
薄氷にドローンの機影滑りおり
灯朧や兵戈無用にあればこそ
常然(じょうねん)
(本名・北野常然)1977年生まれ
東京都出身、岐阜県在住
楽園俳句会所属、いつき組組員、塔短歌会所属、節談説教研究会所属
おほきな根
👤田邉大学

高速の魚津ICを降りて、日本海を正面にしばらく走ると、コンクリートと強化プラスチックで構成された魚津港が見えてくる。
その魚津港の片隅、小高い丘の地下に埋没林博物館はある。
埋没林とは、文字通り”地面に埋まっている林”のことで、火山の噴火や海面上昇により森林が地下に密閉され、分解されることなく現在まで形を保っている、いわば”森林の化石”である。
魚津の埋没林は、およそ2000年前に片貝川の氾濫によって土砂に沈み、海面が上昇したことで地下水の豊富な冷たい大地にその姿を留めることとなった。
そもそもが地下に埋没したものだから、博物館も地下にあるという訳である。
館内には埋没林に関する細かな説明や、埋没林を使った工芸品なども展示されているが、一番の目玉は水中展示だろう。
出土した当時の状態を保つため、埋没林全体を水槽で囲み、地下水を流し込んで空気に触れない処理が施されている。
単純に書けば、水中に根があるだけで、なんてことは無いように思えるが、実物は想像以上の迫力である。
縦6m×横18m×深さ2.5mの水槽に3つの樹根があり、それらはぎりぎり触れ合わない距離感で、ゆったりと配置されている。
普段見かける水槽は生物がいるのが当たり前だからか、樹根と砂のみの水槽は、あまりにも静謐で巨大で恐ろしい。
満たされた地下水で樹根全体が青白く光っていて、見る角度によって、黄緑にも濃紺にも表情を変える。
日本刀のように鋭く尖った部分もあれば、クジラの背のように柔らかな曲線を描く部分もあり、水槽の周囲を歩き回ってすっかり見入ってしまった。
雄大な自然を再現した水族館や、サンゴで飾られたアクアリウムも美しいが、埋没林は見る側の観察力や想像力、果ては忍耐力まで試されている気分になる。
水族館やアクアリウムの美しさは、喩えるなら印象派の絵画やバロック音楽のように明快かつ共感性の高いもので、埋没林は、コンセプトそのものを見せる現代アートのように、意味を受け取る意思があって初めて成立する美しさがある。樹や根や水など、いつも接している素材で構成されながらも、そこに現れる姿は馴染みのない異世界の雰囲気をまとっていた。
たった30分の短い訪問ながらも、2000年分の神秘と美しさをたっぷりと浴びて、魚津の地を後にしたのだった。
余談だが、埋没林博物館の近くには魚津水族館もある。
「寿司といえば、富山。寿司ネタ見るなら、魚津水族館。」のキャッチコピーとともに、全ての展示物に美味しいか否かが記されているという、印象派もバロックも関係ない狂気と食欲に満ちた水族館だったので、是非とも併せて訪れてみて欲しい。
おほきな汗
蝶々のやうに乗り換へ荻窪へ
ほんたうに緑の池や甘茶寺
蜂蜜のながき一滴はるのくれ
少年になるほか無くて金鳳花
原付の速さに麦と思ふなり
瀧落ちて自由時間となる水も
無駄無駄といふ孑孒の伸び縮み
東京はおほきな汗の匂ひかな
田邉大学
2000年生まれ、大阪府出身
「秋草」所属