
現代俳句2026年03月号掲載 写真提供:飯塚英夫
「百景共吟」より2句鑑賞
👤杉本青三郎
恋の火の通りすぎたる末黒野よ
高橋将夫
若かりし日への回想の句として読む。
遠くに行ってしまった青春こそは正しく「恋の火の通りすぎた」もののようであったのであろう。
最後の「よ」は呼びかけなのか余韻が残る作品である。
缶の口に残るコーヒー菜の花忌
楠本奇蹄
目の前のある、僅かばかりのささやかなコーヒーの飲み残しから、下五で風景が一気に拡がる。
一面の菜花畑であり、遠く海まで臨めそうであり、しかもそれは忌日でもある。
しかもまだ、春からは程遠い。
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現代俳句2026年03月号掲載 写真提供:河合香都子
「薄墨桜」より1句鑑賞
👤杉本青三郎
初蝶や折り目から地図破けさう
佐藤映二
長い間相当に使い込んだ地図なのであろう。
その「破けそう」な綻びの質感と、少し不安定に飛ぶ初蝶の質感が、うすくクローズする。
二物は延々と伸ばした線の先で交わる。
春だからこそ地図の綻びも目立つのであろう。