第1回ポリネシア俳句大会受賞作品鑑賞①
👤マブソン青眼

マルキーズ諸島・ヒバオア島(筆者が住んでいた小屋)
ビデオ・リンク:
第21回タヒチ・ブックフェアで開かれた講演「アニミズムと文芸としての俳句」
(フランス語 マブソン青眼)
Ma’ita te tai,
tani te ‘eo manu
‘ena te uaRaita Kaimuko, Hiva Oa, Iles Marquises, Polynésie française
海白み
鳥語ひとつに
なれば喜雨フランス領ポリネシア・マルキーズ諸島・ヒバオア島 ライタ・カイムコ作
(マブソン青眼訳)
2021年11月に開催された第1回ポリネシア俳句大会の最優秀賞は2つの部門があった。
ポリネシア諸語の部門と、フランス語の部門。掲出句は前者の最優秀賞に輝いた作品で、ポリネシアの中でも少数言語といえるマルキーズ語(話者がわずか9000人)で書かれている。
私は2019年から2020年まで1年間そのマルキーズ諸島に住んだことがあるので、何とかして南マルキーズ語から日本語訳を作ってみたが、絶妙な“アニミズムの二重写し”なる句意が伝わるのか、あまり自信がない。
要は、南太平洋特有の偏西風であるアリゼ(Alizé、「貿易風」とも言う)が南東から吹き始めると、沖には白波が立ち、同時に島の鳥たちがその風に答えるかのように一斉に同じ音程で囀るという、極めて具体的な描写である。
それは、いわゆる「ナチュラリズム的な描写」(西洋風の科学的な描写)にあらず、「アナロジズム的な描写」(東洋の五行説や季題などに基づいたカテゴリーの組み合わせ)によるものでもない。
やはり、「アニミズム的な描写」となっている。つまり、複数の視点(ここでは海の視点と鳥の視点)を同時に顕わすことによって、物質の世の多様性の奥に潜む精霊の世界、その統一性を暗示するという手法が顕著だ。
事実、日本の俳句においても、いわゆるナチュラリズム俳句でもなく、アナロジズム俳句でもない、「アニミズム俳句」という深遠なる源流が認められる。
芭蕉「おくのほそ道」・旅立の章段の名句「行春(ゆくはる)や鳥啼(なき)魚(うを)の目は泪(なみだ)」がその好例といえよう。
「行く春」という精神的な世界を、2つの視点(鳥の視点と魚の視点)から同時に描いているのだ。
また、金子兜太がやはり南洋で作った名句「犬は海を少年はマンゴーの森を見る」が思い出されるだろう。
とにかく、「俳句の国際化」と唱える時、多くの場合は実際のところ日本と欧米(とりわけ英語圏)との文化交流に限られたものとなりがちなのである。
しかし、(フランス出身である)私から見ても、俳句の源流はむしろアニミズムの複眼的視点(二重写し)の世界観(オントロジー)にあり、(アメリカを中心とした世界経済事情はさておき)意義ある「俳句の国際化」を進めるには先ず、同じ「アニミズム的感性」をもった文化圏(オセアニア、アジア、アフリカ、アメリカの原住民文化)と交流すべきだと思われる。
この連載で6回にわたって、第1回ポリネシア俳句大会の作品を扱い、そんな”知られざる俳句の国際化”の可能性を検証していきたい。