現代俳句2026年02月号掲載     写真提供:櫻井みどり

「百景共吟」より2句鑑賞

👤杉本青三郎

地平まで雪なり雪を点しけり
             林桂

「手袋の古層」という把握が、繰り返しの冬を重ねた時間と記憶の沈殿を感じさせ、静かな余韻を生んでいる。
まだ降らぬ雪を「待っている」と措くことで、季節への親和と内面的な温もりがにじみ、抑制の効いた美しい叙情が立ち上がっている。

枯芭蕉少し揺らいでやせがまん
             堀之内長一

「手袋の片手」という欠如の感覚を、「量子もつれ」という現代科学の比喩で捉えた着想が鮮やか。
離れていても見えぬ関係で結ばれる存在感が、冬の静けさにひそむ思念を広げ、ユーモアと知的余韻を兼ね備えた一句となっている。


現代俳句2026年02月号掲載     写真提供:小林貞次

「薄墨桜」より1句鑑賞

👤杉本青三郎

生涯の敵もなつかし年酒酌む
             渡辺正剛

「年始回り」をしたことがない年代の人間にとっては、遠い昔の出来事のようにも思える。
しかも「生涯の敵」だと思っていた人と、酒を飲むのである。
若かりし頃の作者に戻って、回想の世界に浸って暫くは戻らない。