現代俳句の躍動

『受け止むる淵』現代俳句の躍動 第1期・2 海野良三 著

(頒価2,000円 2018年11月刊)

「人のよささうな案山子でいいのかな」の一句は傑作。まさに著者良三さんの自省の気持が托されていよう。『受け止むる淵』とは見事な句集。旅吟も多く、知識欲旺盛さは変らないが、からだを張って刺激を昇華させる努力を〈淵〉と受け止める深さ、勁さが見られ感動する。(宮坂静生)

遠雷のごとアイガーの雪崩音
菜の花や鬼の雪隠傾ぎたる
人のよささうな案山子でいいのかな
みちのくの遮光器土偶蟾蜍(ひきがへる)
寒暮光海すれすれに飛ぶ一鵜
生きるとは出発の日々雪解川
万象に息といふもの初明り
山小屋は銀河のふちに舫ひけり
微笑みを尽くし穂草の枯れにけり
雪激し受け止むる淵無尽蔵
根雪からひゆんひゆん楉(しもと)天に跳ね
よく嚙むはよく生きること木の芽和
(自選十二句)

『河鹿笛』 現代俳句の躍動 第1期・1 大里卓司 著

(私家版 2018年11月刊)

戦後とはいつも戦前雨蛙
敗戦忌父が答えなかった訳
生きていてすまないと聞く八月の空
なんにでもなれたとおもう春の泥
入学は明日バスケシューズの匂いたつ
臨界の穴より地虫貌を出す
春の鍵一分前には握っていた
周五郎を閉じ花びらを掃きに出る
開場を待つプールの底に朝日
厨窓から初冠雪の永田岳
ひらがなの余白をあやす白式部