中村 克子(なかむら・かつこ)第13回現代俳句協会年度作品賞受賞

中村 克子(なかむら・かつこ)

・1937年(昭和12年)長野県生まれ。栃木県在住。
・1998年(平成10年)「梯」・「鬼怒」入会。石田よし宏に師事。
・1999年(平成11年)「響焰」入会。山崎聰に師事。
・2000年(平成12年)「地祷圏」創刊同人。
・2011年(平成23年)「響焰賞」受賞。
・2012年(平成24年)第66回栃木県芸術祭文芸賞受賞。
・現在、「響焰」・「地祷圏」同人。現代俳句協会員。
・句集に『裁ち鋏』。
 

 「沈黙は距離」 中村克子

  沈黙は人恋うる距離十三夜
  八月の記憶ぶつかり合っており
  風がきて人間くさき菊人形
  家系図をたどりてゆけば天の川
  月光を纏いてきたる通夜の僧
  青空のために咲きいる冬桜
  晩節の扉はかるく石蕗の花
  雑踏に黒の落ち着く二月かな
  遠景を崩さぬように冬の雁
  切株の貌してひとり冬日向
  雑踏のひとりにひとつ冬の月
  人を見てから白鳥の翔びたてり
  春一番ふわりと闇を裏返す
  朧夜の針一本の行方かな
  見えぬもの追いかけてゆくしゃぼん玉
  にんげんを離れてゆきぬしゃぼん玉
  これからも軍手と呼ばれ春耕す
  葉桜の闇に落ちつく齢かな
  夏山へ連れ出す父の影法師
  炎天下たましいだましだまし歩く
  人も木も浮遊している熱帯夜
  蟬の穴のぞく哲学を探るように
  葉桜のうしろに伸びて別の道
  体内の紐ゆるゆると秋立ちぬ 

  一本のくさりに縋る紅葉山
  東京の空のでこぼこ鳥渡る
  青々と顔なき秋刀魚売られけり
  木守柿たましいばかり残りたる
  乗換えるたび天の川近づきぬ
  もう逢えぬ距離なり釣瓶落しかな
 
 
※句は現代俳句データベースに収録されています。
※受賞者略歴は掲載時点のものです。