恋ってさ雷みたいにやってくる 上田眞奈美 評者: 網野月を

 上五「恋ってさ」で切れを生じている。「さ」が言い放ちになっているが、現代語の切れ字の働きをしているのだろう。同時に客観的な作者の視点も微かに窺えて、おそらくは作者自身に起きた出来事だろうと想像はするが、自らの恋心を突き放して第三者の立場から見ているように感じさせる効果がある。中七の「雷みたいに」という直喩の表現で座五の動詞「やってくる」を導き出している構図である。直喩の表現は安易に使用すれば、好もしくないと評されてしまうところがある。がこの句の場合は、「雷」のイメージに託したところが成功の鍵であろう。むろん「雷」のディスクール(言説)に拠ってイメージされる具体性は読み手によって異なっている。が確実に、想像される何かを有している「雷」なのである。この具体性が「恋」の質感と共鳴しているのだ。いや「恋ってさ」の叙法に拠る「恋」の質感にある種の付加価値を添えているのだ。
 作句をしたころの作者は中学生か高校生であったろう。心をまだ流動的状態に保ち続けている年ごろである。羨ましい。素直に羨ましい、と感じる。
 季語「雷」は入っているが、直喩表現の喩えとして句中に登場しているので、解釈によっては無季の俳句なのかも知れない。作者が青春真っ只中にあるので、敢えて言うなら春から初夏に分類したい句である。時候か、天文かはさておいて。

出典:「第二十二回 伊藤園お~いお茶新俳句大賞入選作品集 自由語り」
   佳作特別賞受賞(愛知県 十五歳)

評者: 網野月を
平成27年12月21日