猪がきて空気を食べる春の峠 金子兜太  評者: 村井和一

 空気を食べる猪。山の彼方の青空まで食べそうです。猪は満足そうです。
  猪のねに行くかたや明の月  去来
に対して芭蕉は、人里へ下りた猪が明け方に山へ帰るのは古人も知っていたことだ。優美を旨とする和歌でさえそれを〈帰るとて野べより山へ入る鹿の跡吹きおくる萩の上風〉と技巧的に詠んでいる。自由に作れる俳諧で、当り前に詠んでも仕方がない、と評しました。「俳諧自由」という言葉の起りです。
 
評者: 村井和一
平成13年2月26日